Ultimate Rondo

アトリエシリーズとゲーム音楽とその他いろいろ

ライザのアトリエ3 闇精と月精の効果についての検証結果

カラのスキル等で付与される精霊について検証結果から推測される仕様をまとめます。

全ての強化量はアイテムダメージだけで検証しています。それ以外のダメージにどう影響するかは分かりません。

検証環境

PS4版 ソフトウェアバージョン1.04 DLC錬金術の神秘」「冒険の極意」適用後

付与手段

光精・闇精・月精の付与手段には次のものがある。

  • 通常攻撃「ノック」
    • カラ自身に光精を付与
  • スキル「ダークスピリット」
    • カラ自身に闇精を付与
  • オーダースキル「ホーリートレイル」
    • 操作キャラに光精を付与
  • オーダースキル「シャドウスフィア」
    • 操作キャラに闇精を付与
  • パッシブスキル「キースクライヤー」
    • キーチェンジ使用者に、現在HPが最大HPの50%以下の場合は光精を、50%より大きい場合は闇精を付与
  • フェイタルドライブ「ルナジャッジメント
    • 前衛全員に月精を付与

光精と闇精は共存できず、互いに上書きされる。

闇精の効果

闇精には2種類あり、挙動が異なると考えられる(ゲーム内の説明文は同じ)。

  • 「ダークスピリット」または「シャドウスフィア」で付与したもの
    • これを通常の闇精と呼ぶことにする。
    • 最大HPの5%(小数点以下切り捨て)を消費し、その値に応じてダメージが増加する。実際に消費できたかどうかは関係ない。
    • 強化量(%)は ceil(消費量×0.7)+15 で計算される。ceilは小数点以下切り上げを示す。
  • 「キースクライヤー」で付与したもの
    • HPを消費せず、ダメージが50%増加する。

「キースクライヤー」で付与した闇精は、通常の闇精より常に優先される。通常の闇精を付与した後に「キースクライヤー」で闇精を付与すると上書きされるが、その逆は上書きされない。これは残り時間がリセットされるかどうかで確認できる。

光精を付与するとどちらの闇精であっても消滅するので、その後に改めて通常の闇精を付与することができる。

50%という強化量は通常の闇精において最大HPが999の時のものであり、最大HPが1020以上であれば通常の闇精のほうが強化量が大きくなる。

月精の効果

最大HPの5%(小数点以下切り捨て)を消費し、その値に応じてダメージが増加する。実際に消費できたかどうかは関係ない。

強化量(%)は ceil(消費量×0.7)+30 で計算される。ceilは小数点以下切り上げを示す。

ライザのアトリエ3 アイテムダメージ追求 第1回

現在私が達成できている最大ダメージと、装備などの構成、これまでの調査から推測される仕様をまとめます。

★ルールとプレイ環境

敵1体に対する1個のアイテム使用で、できるだけ大きなダメージを出すことを目指す。

プレイ環境:PS4版 ソフトウェアバージョン1.04 DLC錬金術の神秘」「冒険の極意」配信前

★結果

4141万3196ダメージを記録した。

www.youtube.com

★敵

ラムロースト2号を採用した。攻撃してこない、敵のHP切れを気にしなくて良い、敵の姿を選べる、鍵の使用回数を消費しないので何度でも連続挑戦可能、アイテム1個のダメージを自動集計してくれる、ジェムが貰える、など良いことずくめ。

キーチェンジで使う鍵のモチーフと敵の種族の組み合わせによってダメージ増加効果が得られるため、モチーフが一致していて変な耐性を持っていない姿を選ぶ。私の場合は歯車モチーフだったので初期状態の姿(イタチ種族)を選んだ。

★パーティ構成

メインのダメージ役はアイテム関連のパッシブスキルと武器効果が優秀なライザ。

前衛の仲間として、キャラ固有のダメージ増加効果をライザに与えられるカラとクラウディアを採用。カラは闇精と月精、クラウディアは「騒乱の旋律・改」がダメージ増加効果を持つ。

★使用アイテム

アイテムの表記全般について

今作では品質を容易に上げられるので、特に断り書きがない限り品質は999としている。またレベルを持つ特性は最大レベルとしている。

効果のうちリンクコール効果は[LC]、装備強化による付与効果は[付与]と表記する。また効果・特性・超特性のうち結果に影響しないものは記載を省略する。

ツヴァイレゾナンス

ダメージ用。

  • ツヴァイレゾナンス
    • 効果:融合する火炎、[LC]可憐な花びら、鮮烈なる力
    • 特性:破壊力上昇++、追い討ち強化++、少数ボーナス++
    • 超特性:オーバーパワー

本来はアストローズのほうがダメージが高いが、各効果ごとに1ヒットであるためダメージ表示が999万9999でカンストしてしまう。

対してツヴァイレゾナンスは効果1の「融合する火炎」が2属性×2ヒットに分かれていて、リンクコール効果も2ヒットに分かれるため、カンストに引っかからずにダメージを伸ばすことができる。

デバフ用アイテム

呪いと眠りは深度がダメージ値に影響するため、偽りのブーケで最大深度まで付与する。眠りが解除されないようライザが直前に5回使用する。

  • 偽りのブーケ
    • 効果:毒を持つ花・超、呪いを与える・超、眠りを与える・超
    • 特性:無力の神罰、無守の神罰、無速の神罰
    • 超特性:ブレイク必中

さらに武器特性「状態異常特攻」の強化値を上げるため可能な限りのマイナス効果を付与する。

マイナス効果 付与手段
偽りのブーケの効果
眠り 偽りのブーケの効果
呪い 偽りのブーケの効果
火傷 アストローズの効果
凍傷 レヘルンの効果
麻痺 プラジグの効果
束縛 特性「強粘性」
攻撃下降 特性「無力の神罰
防御下降 特性「無守の神罰
速度下降 特性「無速の神罰
全ステータス下降 アカシアの原典の効果
状態異常耐性低下 アカシアの原典の効果
最大体力下降 エーデルフトの効果
クリティカル率下降 プラジグの効果
物理耐性低下 アストローズの効果
魔法耐性低下 ラヴィネージュの効果
火耐性低下 アカシアの原典の効果
氷耐性低下 アカシアの原典の効果
雷耐性低下 アカシアの原典の効果
風耐性低下 アカシアの原典の効果
鍵生成確率増加 オーダードライブ「演目・暁光」

これで21個。多すぎて鍵生成確率増加がはみ出ているがちゃんと乗っている。

このためプラジグ・レヘルン・ラヴィネージュ・アカシアの原典・アストローズ・エーデルフトに必要な効果を付けて仲間に持たせておく。特性は「強粘性」が共通で、CCが高いものは「永久機関」、その他は威力上昇系(発生確率に影響するかは不明だが一応)。超特性は念のため、投入可能な素材があれば「厄災」を付けておいた。

バフ用アイテム

  • エイビスコール
    • 効果:宇宙が震撼する、深淵の呼び声
  • 時空の天文時計
    • 効果:未来に干渉する
  • ゴールドハート
    • 効果:栄養たっぷり

エイビスコールは多数のダメージ増加系バフ効果を持つ。また月精と闇精の効果量が最大HPに依存するためゴールドハートを用いている。

T-Lvを上昇させる時空の天文時計はフェイタルドライブのためにカラ、最後のT-Lvの最大化(「可憐な花びら」の威力と「騒乱の旋律・改」の強化量に影響)のためにライザがそれぞれ持つと便利。ギリギリだが前衛3人でアイテムを持ちきれる。

  • カラ:時空の天文時計、デバフアイテム×3
  • クラウディア:エイビスコール、デバフアイテム×3
  • ライザ:偽りのブーケ、時空の天文時計、ゴールドハート、ツヴァイレゾナンス

★装備構成

ライザ

  • ミストラルケーン
    • 効果:アンチマテリアル・超、[LC]会心強化+20%、[付与]四色の羽根・超、[付与]いにしえの徒
    • 特性:リスクブースト・火、リスクブースト・氷、状態異常特攻
    • 超特性:鷹の目
  • モイヒェルメルダー
    • 効果:[LC]会心強化+40%、仕込み武器、[付与]レインフォース・超
    • 特性:戦士の誓い、騎士の誓い、支援の誓い
    • 超特性:援護の心得
  • ウォーロックリング
    • 効果:死神の魔術、魔の領域、[LC]会心強化+30%、境界越え
    • 特性:戦士の誓い、騎士の誓い、支援の誓い
    • 超特性:守護者の心得
  • ハーナルリング
    • 効果:英雄の魂、極限集中、コアオーバーフロー、[LC]会心強化+40%
    • 特性:戦士の誓い、騎士の誓い、支援の誓い
    • 超特性:援護の心得

アルケミストはロールレベル合計に応じてアイテムダメージを強化する効果があり、ロールレベルを上げる効果が全て火力アップに繋がる。

パッシブスキル「けた外れの創造力」「錬金術の真髄」を習得しておく。アクションオーダーの全条件にアイテムダメージ増加効果を持つ「ミルキーウェイ」をセットしておく。

今回の試行では戦闘前の最大HPは558(ゴールドハートと料理効果で1339)だが、月精の効果に今日気付いたため装備の最大HPは伸ばせていない。本来は鍵にも活力のシンボルなどが複合しているほうが良い(厳選が…)。

他のメンバー

カラはパッシブスキル「キースクライヤー」を習得しておく。

CCを軽減する「アルケミストの証」「四精霊のアミュレット」、CC獲得量を上げる「ハーナルリング」「クルーガークローク」、初期T-Lvを上げる超特性「先見之識」を付けておく。

アクションオーダーの全条件に何かセットしておき、オーダードライブにフェデリーカの「演目・暁光」をセットする。

キーチェンジ用の鍵

バースト効果の「火属性変換・極」と「アイテム強化・極」が両立しているものを頑張って手に入れる。

属性変換の効果は同時に1つしか付かない(多分)。

★戦闘の流れ

  1. カラを操作キャラとして戦闘開始
    • 「先見之識」でT-Lvが上がるので即座にアクションオーダーが提案される
  2. スキルでCCを貯めアクションオーダーを発動する
  3. 時空の天文時計を使う
    • T-Lvが上昇しアクションオーダーが提案される
  4. デバフアイテムを3つ使う
  5. オーダーカウントが3以上になるので演目・暁光を発動する
  6. ルナジャッジメントを発動し、ライザに月精を付与する
  7. 操作キャラをクラウディアに変更し、CCが足りているか確認する
  8. エイビスコールとデバフアイテム3つを使う
  9. 騒乱の一矢++を使用し「騒乱の旋律・改」を付与する
  10. 操作キャラをライザに変更し、CCが足りているか確認する
  11. キーチェンジする
    • キースクライヤーの効果で闇精が付与される
  12. 仲間に割り込まれて睡眠が解けないよう、間をあけずに次のアイテムを使う
    • 偽りのブーケを4回使う。T-Lvが1ならば時空の天文時計も使う
    • 偽りのブーケ、時空の天文時計、ゴールドハート、ツヴァイレゾナンスを4連携で使う

★ダメージ計算詳細

全ての解説内容は、ゲーム内でのダメージ計測結果や過去作からの類推に基づく推測であり、正確性は保証しない。

戦闘中のバフ・デバフ共通の仕様として、同系統の効果が複数付与された場合、残り時間が表示されるもの同士は両立せず強いものだけが残る。残り時間が表示されないもの(鍵バースト効果)と表示されるものは両立する。

ダメージ計算表

スプレッドシートにまとめている。

計算上の合計ダメージの最小値は3246万7124、最大値は4350万5488となった。

推定ダメージ計算式

(ダメージ) = (基本ダメージ値) × [(アイテム強化倍率)×(クリティカル倍率)×(その他ダメージ倍率) + (弱点加算値)] × (属性倍率) × (アイテム特性倍率)

今作では品質を容易に上げられるのと、品質による変動を調べるのが面倒だったので、本記事では品質999でのダメージを基本ダメージ値として扱う。

基本ダメージ値

今作では乱数を固定できないので、ダメージを50回測定した最小値と最大値を載せる。ダメージ計算表で用いている乱数幅もこの測定値に基づく。

  • 「融合する火炎」は火・氷属性それぞれ2ヒットする。1属性1ヒットあたり801~1140。
  • 「鮮烈なる力」は基本的に火・氷属性それぞれ2ヒットする。1属性1ヒットあたり乱数なしで70。(弱点属性での測定値140から逆算)
  • 「可憐な花びら」はツヴァイレゾナンスに付けた場合2ヒットする。T-Lv最大の時に1ヒットあたり1166~1448。

「鮮烈なる力」は他のダメージ効果が弱点を突いた時に同じ属性で発生し、例えば「融合する火炎」に対しては2属性×2ヒットする。リンクコール効果に対しても発生するが、「鮮烈なる力」より後にある効果4に付けた場合は2ヒット目だけに発生するように見える(今作のダメージ表示が絶望的に見づらいのでよく分からない)。計算表ではリンクコール効果に対して2ヒットとも発生するものとしている。

アイテム強化倍率

次の強化を全て足すと+350%、倍率は4.5倍となる。

  • パッシブスキル「けた外れの創造力」「錬金術の真髄」合計(4個連続使用時):+40%
  • ミストラルケーン「アンチマテリアル・超」:+60%
  • 武器付与効果「いにしえの徒」:+20%
  • ウォーロックリング「魔の領域」:+30%
  • ハーナルリング「英雄の魂」:+50%
  • ハーナルリング「コアオーバーフロー」:+30%
  • 鍵バースト効果「アイテム強化・極」:+70%
  • アクションオーダー「ミルキーウェイ」T-Lv最大時:+50%

ライザのパッシブスキルは両方習得済みのデータしかないため合計値を掲載。

コアクリスタル調整の「コアアイテム威力強化」とロール「アルケミスト」の効果は「アイテム特性倍率」のほうに加算される。

クリティカル倍率

基礎値が+25%で、次の強化を全て足すと+535%、倍率は6.6倍となる。

  • 「融合する火炎」による強化:+60%
  • 武器超特性「鷹の目」:+50%
  • モイヒェルメルダー「仕込み武器」:+50%
  • ウォーロックリング「死神の魔術」魔法ダメージ効果2つ:+80%
  • ハーナルリング「極限集中」:+50%
  • 鍵シンボル効果「集中のシンボル・極」:+40%
  • 装備のリンクコール効果合計:+130%
  • エイビスコール「宇宙が震撼する」:+50%
  • 「騒乱の旋律・改」T-Lv最大時:+25%

ウォーロックリングの「死神の魔術」について。"魔法ダメージがクリティカルとなった時、与えるダメージがさらに増加する"と独特な書かれ方をしているが、実際に魔法ダメージの効果の数ごとに+40%の強化を得る。例えばリンクコールで全ての効果を魔法ダメージにしたアストローズは+160%の強化を得られる。ツヴァイレゾナンスの場合は「鮮烈なる力」が魔法ダメージであってもカウントされず、「融合する火炎」とリンクコール効果「可憐な花びら」で+80%の強化となる。

その他ダメージ倍率

これまで「最終ダメージ倍率」と呼んでいたが、掛かる場所が最後じゃなくなったので呼び方を変えてみた。

次の強化を全て足すと+657%、倍率は7.57倍となる。

  • 武器特性「状態異常特攻」異常数21個:+105%
  • スーパーレア鍵のキーチェンジ時のモチーフ一致:+50%
  • 眠りLv5:+300%
  • エイビスコール「宇宙が震撼する」敵ブレイク時:+50%
  • 「騒乱の旋律・改」T-Lv最大時:+25%
  • 闇精(キースクライヤー):+50%
  • 月精(最大HP1339):+77%

(追記)闇精・月精の強化量については次の記事を参照。今回の記事の時点ではキースクライヤーを用いて闇精を付与していたのでこの強化量になっている。

ライザのアトリエ3 闇精と月精の効果についての検証結果 - Ultimate Rondo

弱点加算値

今作の弱点の処理は特殊で、ダメージが2倍されるのではなく計算式の途中で+1が加算される形式と思われる。アイテム強化倍率・クリティカル倍率・その他ダメージ倍率を全て掛けたものに+1されるため、もしこれら3種類の強化が一切無ければダメージは2倍になるが、ダメージ追求では弱点の影響は相対的に小さくなる。

(追記)装備やアイテムが弱点時ダメージ増加効果を持つ場合は、弱点加算値は次のように計算される。

(弱点加算値) = 2 × (装備効果の弱点強化倍率) × (アイテム効果の弱点強化倍率) - 1

装備効果の弱点強化倍率は、基準値を1として装備効果などの弱点時ダメージ増加を加えたもの。例えば「純粋な希望」「賢者の智慧」「人智を超えた霊力」はそれぞれ0.3を加算する。

アイテム効果の弱点強化倍率は、基準値を1として攻撃アイテム効果の弱点時ダメージ増加を加えたもの。例えば「帯電氷の波動」「旋風炎の波動」はそれぞれ0.4を加算する。

例えば「賢者の智慧」と「帯電氷の波動」を両方採用した場合、弱点加算値は 2 × 1.3 × 1.4 - 1 = 2.64 と計算される。さらに「人智を超えた霊力」を採用した場合は 2 × 1.6 × 1.4 - 1 = 3.48 となる。

属性倍率

複合属性の強化は加算される。例えば魔法・火属性の攻撃であれば、魔法属性強化と火属性強化が加算される。

次の強化を全て足すと、魔法・火属性は合計+335%、魔法・氷属性は合計+285%となる。

  • 魔法属性
  • 火属性と氷属性の両方に加算
    • 武器特性「リスクブースト・○」最大レベル:+50%
    • 武器付与効果「四色の羽根・超」:+20%
    • エイビスコール「深淵の呼び声」:+40%
  • 火属性
    • 鍵バースト効果「火属性変換・極」:+50%

アイテム特性倍率

攻撃アイテムの特性・超特性、コアクリスタル調整の「コアアイテム威力強化」、ロール「アルケミスト」による強化が合算される。

次の強化を全て足すと+510%、倍率は6.1倍となる。

  • 特性「破壊力上昇++」最大レベル:+50%
  • 特性「追い討ち強化++」最大レベル:+50%
  • 特性「少数ボーナス++」最大レベル:+60%
  • 超特性「オーバーパワー」:+50%
  • コアクリスタル調整「コアアイテム威力強化」合計:+30%
  • ロール「アルケミスト」ロールレベル合計90:+270%

「鮮烈なる力」にはアイテム特性倍率が乗らない。

★感想

まだ計算がよく分からないところや明らかに詰めが足りていない箇所もありますが、けっこう独特な仕様が多く、検証が面倒くさくて楽しかったです。私が「ライザ2」の研究を全くやらなかったので、前作から引き継がれた仕様があっても気付けないという点もありますが。

細かな検証を繰り返しているとアイテムリビルドと緩い複製システムのありがたみを感じます。そしてラムロースト2号と4号が便利すぎる。快適インフラ万歳。

過去作ではアイテムダメージはステータス値の追求とは無縁だと思って(スキルや必殺技のダメージ追求勢を横目に)楽をしていましたが、トワイライトプリズムに続き今作でもステータス値が影響してしまうとは…。この土日のうちに記事を公開したかったので一旦見なかったことにしましたが、なかなか大変そうです。

お読みいただきありがとうございました。

ついに見えた、新たなアトリエの姿。「ライザのアトリエ3」感想とこれからのアトリエへの期待

秘密シリーズ3作目、そしてライザの旅の終着点。「ライザのアトリエ3」が発売されました。

www.gamecity.ne.jp

私は発売日の夜から丸2日間、寝るかアトリエかという生活を送り一気にクリアしました。とても楽しかったです。

このブログでは「ライザ2」「ソフィー2」と激重長文感想記事を書いてきましたが、今作でもしっかり書かせていただきます。

おことわり

  • 直接的な表現は避けますが、秘密シリーズ3作全てのストーリーに言及する可能性があるため、ご注意ください。端的に言えばネタバレを含みます。
  • この記事の感想は全て私の主観的なもので、絶対的な良い・悪いという評価を主張するものではありません。
  • PS4版のソフトウェアバージョン1.01(タイトル画面の表示は1.00a)でのプレイ記憶を元にしています。記載内容がアップデートで改善・変更されている可能性があります。難易度設定はNORMALです。
  • 作品名を指す時は「ライザ」「ソフィー」のように鉤括弧付きの略称で書きます。また記事中の前2作という表記は「ライザ」「ライザ2」のことを指します。

ストーリーとキャラクター

メインストーリーの構成は良く練られていて、難解複雑でなく入り込みやすいと感じました。そして何より、キャラクター達の魅力が引き立つストーリーでした。

パーティメンバー11人のうち、前2作から続けて登場した8人はしっかりと成長が描かれ、そして新キャラ3人は魅力的でメインストーリーにも絡むので、全員に愛着を持つことができました。戦闘で全員を使うことはなかったですが、戦わなくても存在感は十分に感じられたし、控えメンバーも含めて戦闘中に皆が喋るのが良かったです。

私が前2作で気になっていた点も改善されていました。

  • 「ライザ」では故郷であるクーケン島の閉鎖感と陰湿さが強調され、村会で追及を受けた時の解決方法も真に理解し合うのではなくマッチポンプでやり込めて終わりと非常に印象が悪かったです。終盤でボオス個人とは和解したものの、身勝手な物言いの漁師に代表される住民の印象は最後まで悪いままでした(「リディー&スール」で故郷の人々の温かさが見事に描かれていたので尚更ショックでした)。対して今作のフェデリーカとディアンは、自身の故郷の問題と向き合い人々と理解し合う過程がしっかり描かれ、意見が対立していたキャラの印象も良かったです。
  • 「ライザ2」ではストーリーの展開がワンパターンで、ライザ達の無謀な行動や察しの悪さにプレイヤーが付き合わされているという印象を受けました。対して今作ではパーティメンバー全員が思慮と信念を持ち、それぞれの役割を果たすことでストーリーが進んでいきました。

「ソフィー2」から引き続きキャラクターの表情が効果的に使われ、イベント中の会話のテンポも良くなりました。さらに今作ではイベント終了後に探索等の操作をしながら会話の続きを聴くことができます。これはとても画期的で、11人もいるパーティメンバーになるべく多く喋ってほしい、でもイベントに長く拘束されたくない、その両方を解決する素晴らしい工夫でした。

そして深くは語りませんが、前2作で「このキャラ達のその後を描いてほしい」と思っていたいくつもの点を、期待以上にしっかり描いてくれました。男女関係について従来のアトリエ作品と比べるとかなり攻めた直接的なセリフもありましたが、秘密シリーズ最終作ということもあって思い切ったのでしょう。私は良いと思います。

鍵システム

今作のメインストーリーとほぼ全てのゲームシステムを横断する「鍵」は、それ自体が非常に魅力的なシステムでした。

従来のアトリエ作品の多くでは、

  • 触媒や活性化アイテム等の、調合を拡張する要素
  • 栄養剤や秘密バッグ等の、探索を便利にする要素
  • チェインバースト等の、戦闘での明確なチャンス状態の発生

これらのうち全部または一部がそれぞれ別のシステムとして実装されていました。今作はそれに装備品としての役割を加えた4つの役割を鍵システムがまとめて担うことになります。

開発者インタビューでは、

と語られています。実際にプレイした印象も、とりあえず作って使うのは簡単である一方で、狙った効果を出すことは面倒だと思いました。私もこの設計思想に乗っかって勿体ぶらずに鍵を使い、鍵システムを楽しむことができました。しかしこれは、設計思想から外れて鍵を管理しようとすると絶望的に不便になるので諦めたという一面もあります。

ストーリー攻略中はともかく、戦闘面でのやり込みやアイテムの作り込みをする時はある程度は鍵を管理したくなります。特に調合で使うシンセサイズ効果は従来作品の触媒や活性化アイテムのような機能であり、これらは運良く持っていれば使えるボーナスではなく最終的には一通り揃えておきたいインフラだと思っています。また鍵を装備した時のシンボル効果も、複数の効果が複合したものは再入手が難しいのでついつい貯め込みたくなります。そうしていくとコンテナで鍵一覧を見たときにはグチャグチャです。

複数の要素が鍵システムに集約されることは良いとしても、1つの鍵に役割の違う効果(シンボル効果とバースト効果など)が混在しているメリットは特にないと感じました。一方で管理が煩雑になるデメリットは感じたので、入手方法が共通だとしても4種類の役割に分かれて別々に管理できればそれだけで大きく改善されると思います。

とはいえ全体的には好きなシステムで、「鍵」というモチーフ自体のカッコよさもあってゲーム体験を大きく引き上げてくれました。

探索

私は「ライザ2」の探索では多くの点でストレスを感じていましたが、今作は「ソフィー2」から継承した要素など多数の改善が加えられ、快適に探索することができました

採取に関して。カゴの初期容量はついに300となり、素手での採取は歩きながらできるようになりました。霊獣に乗っていても素手採取ができるので移動中に素材を沢山集めることができます。秘密シリーズはジェム還元があるので素材の物量はあればあるほど良く、気軽に採取できるのは便利でした。

一方で○ボタンの素手採取が快適すぎるためか、□ボタンの道具採取の不便さが目立ちます。採取時に立ち止まるのは仕方ないとしても、取れる物を確認するために道具を切り替えていると敵が寄ってくるのは辛いです。採取ポイントに対する立ち位置の判定も厳しく、採取ポイントに近づきながら連打すれば良い○と違って□だと虚しく素振りしてしまいます。採取ポイントに近づいた時のアイコンで○と□のどちらか分かる等の地味な工夫もしてくれていますが、やはり「ソフィー2」のように採取ボタンは共通のほうが良いと思います。

もっと言うと「ソフィー2」では採取とスイングがともに□ボタンでしたが、私が思う理想はこうです。理想というか「ソフィー」までのシステムそのままですが。

  • ○ボタン:話しかける・調べる・採取(素手/道具共通)
    • 目の前に対象がない場合は何も起こらない、連打できる
  • □ボタン:戦闘突入のためのスイング

目当ての素材を探すのは相変わらず大変です。一応探索リストを活用すると、ランドマークに印が付くのと採取ポイントに近づいた時のアイコンが変わるのですが、あまりにも地味です。せっかく探索リストという仕組みを作るのであれば、「ソフィー2」のガイド機能のように地図に表示して欲しいです。

敵シンボルの多くは広い所にいるので移動中は避けやすく(□採取との相性は最悪です)、ランダムクエストが適度に発生するので自分から戦ってみようかなという気になります。敵のHPが多い上にクエストの戦闘は連戦になることも多いので戦闘時間は長いですが、それくらいは戦闘してくれということなのでしょう。

世界の描写に関して。今作の世界は非常に広く、「4つの地方からなる広大なフィールド」というのが今作の売りの1つとして打ち出されています。グラフィックも進化し(背景のボケについてはアップデートを待ちましょう→改善されました)、特にカーク群島の美しい景色には感動しました。

一方で1つ1つの場所の特徴が薄く、一般的な平原や遺跡は別地方でも似たような景色に見えます。異界オーリムは他の地方と比べると異質ですが、オーリムの中での景色はどこも同じなのでバリエーションはあまり増えていません。今作で場所ごとの特徴を最も感じたのがメイプルデルタなど以前から存在したクーケン島周辺ということもあり、世界が広がったと言っても単に「面積が増えました」という点に留まっている印象です。ラストダンジョンの雰囲気や建物等の作り込みはとても良かったです。

「トトリ」や「フィリス」では明らかに景色の違う特徴的な場所がいくつも登場し、そちらのほうが結果的には広い世界を冒険している感覚を味わうことができました。今後の作品では面積の広さだけでなく、強く記憶に残るような場所の演出に期待します。

ランドマークに関して。今作のランドマークは鍵生成、イベント発生、ファストトラベル、エリアマップ開放と多くの役割を持っています。「ソフィー2」の記事に書いた点なので改善は嬉しいですし、ファストトラベルはとても便利です。

一方でランドマークを訪れないとエリアマップが開放されないのは不便でした。ミニマップの範囲は狭く、相変わらず高低差は激しく直線距離での方角が当てにならないので、ランドマーク到達前に迷うと地獄です。私は普通に歩いた場所が開放される仕組みのほうが好きですが、それに加えてランドマークに到達すると周囲が一気に開放される等のボーナスがあると良いと思います。

ジップラインやイルカなど移動を快適にする方向での追加ギミックが複数登場したのは嬉しいです。ライザを特定の姿勢にさせたいだけのハイハイ等のノロノロギミックは健在なのですが、宝箱のためだけのものやファストトラベルで2回目以降は通らなくていいものがほとんどだったのでまあ良いかなと。「ライザ2」の時は本当に嫌いな要素でしたがファストトラベルが充実するだけで驚くほど容認度が上がりました。

今作の宝箱は数が多く、アトリエ建築の効果を使っても集めるのが大変ですが、大したものが入っていないので別に無視しても良いのが幸いでした。これで参考書とか入ってたら大変だった。旅人の見聞録はさらに大変ですが同じく無視しても問題ありません。

宝箱の中身があからさまにショボいのは恐らく意図的で、ストーリーやイベント攻略に必要な探索と隅々までコンプリートしたい人向けの探索を分けているのでしょう。「ライザ2」で辛い遺跡探究がストーリー進行に必須だったことと比べると良い設計だと思います。宝箱の数を絞る・道中のノロノロギミックを減らす・マップと宝箱自体の視認性を良くする等で宝箱をストレスなく回収できるのであればそれが一番良いんですけどね。

細かい点では、戦闘後のドロップアイテムが移動可能になってからさり気なく表示されること、イベント戦では通常のリザルト画面がなくイベントが進んでいくこと、セーブデータをロードしてもダッシュ状態が保存されるようになったこと等が良い改善だと思いました。細かいテンポアップや手間の削減に気を遣ってくれた印象です。

調合

調合システムは前作ほぼそのままです。鍵システムのところで書いたシンセサイズ効果の集めづらさはあるものの、調合そのものとアイテムリビルドや複製の仕組みも含めて相変わらず遊びやすいです。

「ライザ2」の記事に書いた感想をそのまま今作でも持ちましたが、改めて書くと秘密シリーズの調合システムの画期的な点は

  • 投入回数以内であればどこにでも材料を追加できて、入れれば入れるだけ効果が良くなる

という点だと思います。従来のアトリエって意外とこのシステムはないんですよね。指定された材料が4つならちょうど4つ(複数個同時に作れる場合はその個数倍)の材料を使う必要があって、中和剤だけ1個多く使うみたいなことができない。その制約によって計算パズルのような魅力が生まれていましたが、秘密シリーズの調合は制約を取り払うことでアイテム作り込みの新しい体験を提供してくれました。

レシピの多くはスキルツリーで覚えていくことになるのですが、スキルツリーの全体が見えないので運と直感を信じて手当たり次第に開けていくことしかできず、ストーリー攻略中は常にSP不足を実感していました。というか装備材料と装備品がスキルツリーで真逆の方向にあるのはどうなんでしょう。私のライザ達は終盤までボーンアーマーを着ていました。

アイテム関連で気になった細かい点が1つ。コンテナや調合材料などの並び替えで同じものを複数回押すと逆順になるのですが、今どちらの順で並んでいるのか表示して欲しいです。

戦闘

秘密シリーズ3作を通して採用されたリアルタイム戦闘。今作はキーチェンジによって爽快感は増しましたが、根本的な課題は解決されていないと感じました。

やはりオートで動く仲間の行動をほとんど制御できないのが致命的だと思います。作戦は一瞬でAPを使い切るか上限まで貯まっても使わないかの極端な2択。クイックアクションのためにAPを10だけ残す、みたいなことはできません。攻撃アイテムは使うが回復アイテムは恐らく使わず、薬を持たせてHPを削っても、ネクタルを持たせて操作キャラを戦闘不能にしても知らんぷりでした。

コストターンバトルでは可能だった、キャラの個性を活かした役割分担、敵の行動を予測したWT調整、大技に備えたターゲット集中や全員防御、状態異常やピンチの仲間のカバー、そういった戦略的な戦闘はできません。モンハンのオトモのようにそもそもキャラ性能に圧倒的な差があるならともかく、本来操作キャラと同等の戦略的行動ができるはずの仲間キャラが殴り担当にしかならないのは悲しいものです。回復してくれる分アイルーのほうが優秀かもしれません。

今作はこの歯痒さをキーチェンジのシステムで強引に吹っ飛ばしています。キーチェンジはほとんど全ての行動の待機時間をゼロにするというトンデモ効果で、操作キャラ(特にアイテムを使いやすいライザ)が動きまくることで攻撃も回復も1人で完結します。これはこれで楽しかったし、勢いと爽快感がライザ3の戦闘の魅力であるならこれが1つの完成形なのでしょう。

とはいえ仲間がオートで戦うRPGは、TOD2の非常に賢いオート操作と作戦設定、FF12の細かく行動を指定できるガンビットなど、15年以上も前に洗練されたものが世に出ています。もしアトリエが今後の作品でもリアルタイム戦闘や仲間のオート行動を採用するのであれば、仲間を少しでも賢く動かせるシステムを検討して欲しいと切に思います。

戦闘メンバーは前衛3人+後衛2人の計5人です。これは私のプレイスタイルの問題ですが、私はアイテムをしっかり回すために操作がライザ固定で、操作キャラと入れ替えないと戦わない後衛キャラはほとんど使いませんでした。どうせ前衛の仲間も単純な攻撃行動しかしないのであれば、後衛からも自動で遠距離攻撃や回復が飛んでくる等あってもいいのかなと。

細かい点だけど頻繁に気になるのがフェイタルドライブの○長押しという操作。待機中に一番連打したくなるボタンを押すとFD準備になって待機時間が止まるのが最悪です。さっさと撃てば良いのですが、演出が長い上に撃つとT-LvとAPが空になって一気に動きが鈍くなるので基本撃ちたくありません。普通にターン回ってきた時に□から選択のほうが良かったです。

音楽

前2作と同系統で、非常に高品質で優等生的、しかし没個性的で驚きや感動は薄い。そんな印象を持ちました。

特に良いなと思ったBGMはラストダンジョンの「ひと夏の足跡」、サルドニカの「魔石と硝子はこわれもの」、汎用ボス戦の「揚げ雲雀群青」など。あとやっぱり「ソラミミ」好きだなと思いました。

前作では遺跡ばかり巡っているのでBGMの印象が薄いのも仕方ないのかなと思っていましたが、今作も場所そのものの個性が薄いのが理由かもしれません。比較対象として思い浮かぶのが「リディー&スール」の絵画世界のBGMで、あれだけ各場所の風景やイベントに強烈な個性があればBGMの傾向も変わったでしょう。

戦闘BGMも良い曲なのですが、数が少なくラスボス以外は汎用曲です。通常戦闘曲も「Sweep!~その3~」や「向日葵~その3~」のようにストーリー展開に合わせた盛り上がりは薄く、ボス曲も「Astral Blader」や「紫電清霜」のように戦う相手と結びついた強烈なイメージがないので印象に残りづらいです(比較対象が強いのは認めます)。「揚げ雲雀群青」は曲としてはすごく好きなんですけど、因縁の相手と戦うぞ!みたいにイベント展開が熱い時に流れるとどうしても汎用曲かあという感情が…。

秘密シリーズも3作目ということで、私も発売前からバチバチに個性溢れる曲や攻めた曲は期待していなかったので、予想通りと言えば予想通りです。繰り返しになりますが、とても高品質で良い曲なのは確かです。

EDテーマの「Travelers」はとても良かったです。ライザ達のこれまでの冒険を締めくくり、これからの旅路を祝福するような曲です。ストーリーの結末を見た直後には、歌詞と「Travelers」というタイトルが深く染みました。

総評

プラス面マイナス面色々書きましたが、総合的には楽しかったしとても満足しています。ストーリーとキャラクターの完成度は高く、探索面では「ライザ2」で大きく失われた快適性を取り戻してくれました。調合と戦闘のシステムからは秘密シリーズならではの新しい挑戦を感じることができました。

秘密シリーズは「なんてことない」をキーフレーズとしていたように、身近に思えるような風景や寂れた遺跡が主な舞台でした。良く言えば現実世界の人間であるプレイヤーの原体験を呼び起こすもの、悪く言えば没個性的。ファンタジー感を抑えたフィールドの描写や優等生的にまとめられた音楽の傾向は、良くも悪くもその世界観に従った結果だと思うと納得できます。

今になって思い出すのが、「ライザ」発売2ヶ月前の電撃PlayStation表紙に書かれていた「ついに見えた!新たな"アトリエ"の姿」というフレーズです。私は「ライザ2」の記事に書いたように秘密シリーズには色々思うところがあり、3作目にしてようやく秘密シリーズが作りたかった新たなアトリエの姿を理解できた気がします。

私個人としては過去の感想記事で書いたことが多数改善されていてとても嬉しかったです。ガストちゃんが長大なアンケートを廃止して以降、プレイヤーの意見をどこから集めているのかは気になっているのですが、1人のプレイヤーとして発信した記事が僅かにでも届いたのであれば幸いです。激重長文感想記事を書き始めた最も強い理由は、「ライザ2」で快適性が大きく失われたと感じたからというネガティブな理由なのですが、結果的に書いて良かったなと思います。

私が記事を書くときは他の人の感想も読んで同意できる点を取り入れながら書いていますし、私の記事を読んだ方が同じ感想や違う角度からの感想をどこかで発信することもあるでしょう。そうしてファンの1人1人が作品とクリエイターへの敬意を持って感想を発信していけば、開発の方々に届くこともあるかもしれません。秘密シリーズは私自身が作品との向き合い方と感想の発信の仕方について考えるきっかけにもなりました。

時間はかかりましたが、ライザ達の長い冒険とともに「新たなアトリエの姿」を受け止めて楽しませていただきました。3作通して開発お疲れ様でした、ありがとうございました。アニメも楽しみにしています。

今後への期待

ということで気になるのが秘密シリーズの次のシリーズです。めちゃめちゃ気が早いのですが、秘密シリーズを総括したこのタイミングで書いておきたいので。7月には「マリー」のリメイクが発売されますし、「ルルア」や「ソフィー2」のように過去シリーズの作品が作られるかもしれませんが、遠くないうちに新シリーズは始まるでしょう。

過去の傾向からするとそろそろ「原点回帰」しそうな順番ではありますが、どうでしょうね。過去シリーズの作風に寄っていくかはともかく、最新の秘密シリーズと違いが際立つようなシリーズになって欲しいと思います。

世界観や全体的な風景デザインについては、秘密シリーズは身近に思えるような風景や寂れた遺跡が主な舞台でした。これとの違いを際立たせるのであれば、やはり「リディー&スール」の絵画世界のような非日常とファンタジー感が溢れる世界観が思い浮かびます。

それとは別に、私がずっと密かに期待しているのが和風アトリエです。今までにない試みですし、西洋ファンタジー色が強かった時代は望み薄だと思っていたのですが、ここまでアトリエの世界が多様化して秘密シリーズが完結した後ならいけるんじゃないかなと…どうですかガストちゃん…。

キャラクターデザインや音楽については、世界観が大きく変わればそれに合わせて変わっていくと思うので、イラストレーターさん・作曲家さんと開発の方々との綿密なやり取りから良いものが産まれることを期待しています。キャラクターの性的特徴の強さについては色々言われていますが(今作の3Dモデルの体型も極端だなとは思った)、「ライザ2」のようにゲームプレイを邪魔するものにならなければ私はどちらでも構いません。世界観とイラストレーターさんの作風に合っている方が大事。

音楽について1点具体的な要望を言うとボス戦は敵に合わせた専用曲が欲しいです。そして専用曲を持つに相応しい魅力的なボス敵も。

システムについては、何より戦闘システムを十二分に検討して欲しいです。秘密シリーズのリアルタイム戦闘は3作目となった今作でも十数年レベルで遅れている(あるいは極度に簡略化されたスマホゲームの流れに甘んじている?)と感じているため、戦略性を取り戻すためにターン制バトルに戻すのか、他社ゲーム作品の歴史から学びしっかり仲間と共闘できるリアルタイム戦闘を構築できるのか、楽しみにしています。私はターン制が良いと思いますけどね。

ということで、激重長文感想記事はこれで終わります。これまでのアトリエへの感謝と、これからのアトリエへの期待を込めて。ここまでお読みいただきありがとうございました。

出演者もファンも待ち望んだガストサウンドの祭典。「アトリエ25周年記念 ガストプレミアムライブ」参加レポート

2023年3月11日、「アトリエ25周年記念 ガストプレミアムライブ」が昼夜2公演で開催されました!

shop.koeitecmo.com

思い返せば11月の公式生放送でさらっと発表されたライブ開催。流行り病の影響などもあり、ガストブランドの公式ライブの開催は2018年11月以来となります。当時はネルケの発売前で、この間に発売されたゲームは秘密シリーズなど多数。出演者さんもガスト作品お馴染みの方から最近ガスト作品に参加された方まで11組と大変豪華でした。

私はS席通し券で参加。昼公演をメインに、夜公演もセットリストが違うところなどを触れつつ、参加レポートを書いていきます。

セットリスト

イベント公式サイトにも掲載されましたが、せっかく打ち込んだので出典作品と合わせて載せておきます。

昼公演

【アトリエパート前半】

【MCパート】

  • 金色のレシピ/岸田メル(アトリエオンライン)

【BGMメドレー】

【ブルリフ・サージュ・トライナリーパート】

【アトリエパート後半】

【カーテンコール】

夜公演

【アトリエパート前半】

【MCパート】

  • 金色のレシピ/岸田メル(アトリエオンライン)

【BGMメドレー】

【ブルリフ・サージュ・トライナリーパート】

【アトリエパート後半】

【カーテンコール】

昼公演レポート

開演前

当日は14時ごろに会場に着きましたが、既に事前物販が終わっていて人がたくさん。絶対に欲しかったパンフレットはS席特典で確保済みなので遅めに行きました。

パンフレットには細井プロデューサーと出演者さん、そして歴代サウンドリエーターさんのコメントが掲載されていました。メンバーは阿知波大輔さん、裏谷玲央さん、大塚正子さん、土屋暁さん、中河健さん、中村新一郎さん、松村佑樹さん、水上浩介さん、三武亜紗美さん、柳川和樹さん、矢野達也さん、吉田真利さんの12人。歴代作品で参加された人数が人数なので掲載されていない方もいますが、これだけ作曲者さんのコメントを集めてくれたのは嬉しいですね。

入場するとお馴染みのアトリエBGMが流れていて、ガストライブに来た…!!ということを実感しました。席は1階後ろの方でしたがステージ上はよく見えそうでした。

そして開演時間。「山茶花 on musicbox」「向日葵 ~その3~」をBGMにオープニング映像が流れ、ライブスタートです!

アトリエパート前半

なんと1曲目がschwarzweiß 〜霧の向こうに繋がる世界〜、この時点でびっくり!過去のガストライブでも霜月さん自身のライブでもアンコールの定番曲であり、昼公演の1曲目に持って来たのは意外性を出そうという気持ちを感じます。イントロからインパクトのある曲なのでスタートダッシュはばっちりです。

アーランドシリーズからFalling, The Star LightDiaと続き、次はまさかの夜天に灯す!これは「フォルクスリート2」というボーカルアレンジアルバムに収録されていて、マリーのアトリエのBGM「冒険者の唄」をボーカルアレンジしたものです。マリーがリメイクされる今にぴったりの粋な選曲でした。個人的にフォルクスリートシリーズは好きなので、ライブで取り上げてくれたのも嬉しいです。

そして次もまさかの選曲!Red Zone(Rock Vocal Ver. by ACRYLICSTAB)です。これはルルアのアトリエのコンボセット特典「アーランドアレンジCD」に収録されているボーカルアレンジです。開場前にボーカルUyuさんのツイートを見て少しだけ頭をよぎりましたが、まさか本当に披露されるとは!原曲は「Yellow Zone」より緊迫感が増しながらも可愛さの強い曲調ですが、このバージョンではゴリゴリのロックアレンジが生バンド演奏に映えます。

MC

ここでMCののぐちゆりさん、岸田メルさんが登場。トークや宣伝もありながら、ここで岸田さんは金色のレシピを披露。アトリエオンラインの主題歌でYouTubeに動画がありますが、生で聴いても歌上手すぎ…。

BGMメドレー

グッズ宣伝などで一旦落ち着いた会場を再び盛り上げるように、ここでBGMメドレーがスタート!個人的にはガストライブでボーカル曲と同じくらい楽しみにしているパートであり、BGM演奏をやり続けてくれているのも嬉しいですね。

注目はユーディーのアトリエよりトワイライトブルー。グラムナートシリーズはボーカル曲が少なく、当時の担当歌手さんはライブに参加されない方や現在歌手活動をされていない方もいるのでライブでは取り上げにくいと思います。例えば今回の出演者の中だとヴィオラートのアトリエの「バウムクーヘン」を霜月さんが歌われたボーカルアレンジ版くらい。そのためBGMで1曲入れてくれたのは嬉しいです。

私がずっと好きな曲Astral Bladerも良かったし、アルノサージュのMikazuchiも聴きたかった曲です。2014年のライブでサージュ・コンチェルトのBGMメドレーがあったので、もしかしたら既に演奏されたことがあるかもしれませんが、当時は全く曲を知らなかったんですよね…。柳川さんの素晴らしい戦闘曲です。

今回はボーカル曲だけでなくBGMメドレーでも、全てディスプレイに曲名と出典作品名が表示されていました。全てのゲーム作品を網羅していない人は私含めたくさんいると思うので、とても良かったです。セットリスト速報を作る身としても助かりました。

ブルリフ・サージュ・トライナリーパート

この3作品は私はプレイしていないのですが、どれも世界観の作り込みが深い作品だと思っています。爽やかでキラキラしたGlitter、荘厳さを感じさせるコード・エテスウェイ、冒頭のセリフで一気に物語に引き込むWishreal ~第一章 Elkador~と、アトリエ楽曲とは違う雰囲気で、それぞれの作品の世界に引き込まれるような演奏でした。

アトリエパート後半

アトリエパート後半、まずはフィリスのアトリエからflora。バンド付きライブでも弾き語りスタイルの南壽あさ子さんが印象的でした。

そしてColors茶太さんの出演を知ったときからずっと期待していた曲です。リディー&スールのアトリエのトゥルーエンド曲で、マーレン一家の家族愛を象徴する素晴らしい曲です。

続いてはSyndetos、鈴湯さんの担当楽曲として実質確定枠だったので楽しみでした!矢野さんの魂も込められた1曲。衣装の色はソフィーに合わせたとのことで、ステージ上で振り返る仕草がバックで流れていたアバンタイトルムービーの最後のソフィーとも重なって見えました。

いよいよ最新の秘密シリーズに入り、琴音さんのHands。そしてライザ3のストーリートレーラーが流れ、そのままMCに。

ここでのぐちさんはライザ3のワンシーンのアテレコを披露!ライザとボオスの掛け合いや、ライザが島に残っていた間のことが語られるイベントでした。クーケン島住民関連のストーリーは個人的に思うところがあるので、ライザ3でどう描かれているのか気になるところです。

そしてrecheさんが登場し、トークの後あの夏の隠れ家を披露。まだサントラが出ていないのでフルバージョンは初披露ですよね…!?発売が楽しみです。

カーテンコール

ここで出演者全員が登場し、一言ずつコメント。コメントの内容については記事の末尾にて。

最後の曲は、出演者全員がステージ上で盛り上げながらの無限大クロニクル!ゲームでは必殺技のBGMなのでちょろっとしか流れませんが、フルバージョンは怒涛のサビの繰り返しで無限に盛り上がっていく1曲です。観客の腕は破壊され、昼公演は終了しました。

夜公演

夜公演はセットリスト記載の通りいくつかの曲が入れ替わりました。

特筆すべきは、マナケミアよりSTIGMATANefertitiが演奏されました!「STIGMATA」はラスボス曲ということもあり、かなり攻撃力の高い演奏でした。以前のライブで「攻撃力が高そうな服」という言葉を聴いて以来、みとせさんのこういう曲を表す表現として気に入っています。

新・ロロナのアトリエより紫電清霜も思い出深い曲です。オーツェンカイザーに初めて挑み、BGMに感動しながらもボコボコにされた思い出が…。

カーテンコールでは、みとせさんが自身のコメント代わりにEXEC_RIG=VEDA/.をアカペラで披露。訓練された観客がコーラスを入れることでお馴染みです(?)。私もアルトネリコはプレイしていないのですが、いつの間にか歌えるようになっていました。

そして最後の曲はスターピースこれもとても楽しみにしていた曲です。リディー&スールのアトリエはストーリーが大好きで、ボーカル曲はどれもストーリーと関わりが深いので思い入れが強くなりますね…。昼公演と同様、大盛り上がりの中でライブは終了しました。

おわりに

私自身、そして多くのガストサウンドファンも楽しみにしていたと思いますが、それ以上に出演者の方々の今回のライブに込めた想いを強く感じました。

カーテンコールのコメントにて、今回初参加の方は「楽しかった、参加できて光栄だった、楽屋も会場の雰囲気も暖かかった」2度目以降の方は「久しぶりに会うことができた、今回開催できてよかった、今後も続いていきますように」などの言葉を聴くことができました。前回のライブから約4年間、社会情勢に悩まされながら、まだかまだかと待ち望んでいたのは出演者の方々も一緒なんだなと。終演後も出演者の方々がTwitterで感想や写真をたくさん載せているのを見て、一層そう思いました。

個人的には、意外な選曲や曲順が多かったなと!開幕schwarzweißや、アレンジアルバムからの複数曲ピックアップなどなど。今後のライブでも定番曲を押さえつつ、アレンジアルバムの曲や少しレアな曲も取り上げてくれると嬉しいです。

公式アンケートには今後開催してほしいイベントとして「BGMコンサート」という選択肢があって。私はめちゃめちゃ行きたいけど、集客どうなるんだろう…?など余計な心配をしてしまいますが、ここに項目があるということは開催側でも候補として検討されていると捉えて楽しみにしています。ガスト公式ではないものの、過去にはメルルのアトリエの吹奏楽ステージなどもありました。吹奏楽やアコースティックバンド等だとアトリエサウンドにも合っているし、今回のようなライブとは雰囲気が変わって面白いかもしれませんね。

ちょっと気になった点は、バックの音量が少し大きかったかな?ボーカルが少し聴こえづらい曲や、元音源ではウィスパーボイスや軽やかな感じで歌われている方が強く声を張っている曲があったなと。それはそれでバンドありライブならではの特徴なのかもしれませんが、一応アンケートには書いておきました。

出演者さん、スタッフさん、そして素晴らしい楽曲を作ってくれた作曲者さんに大きな感謝を。本当に素敵なライブでした。ありがとうございました!

「聖剣伝説 Legend of Mana - The Teardrop Crystal -」最終話DC版を受けて今後への期待

「聖剣伝説 Legend of Mana - The Teardrop Crystal -」は、ゲーム「聖剣伝説Legend of Mana」のメインシナリオの1つである宝石泥棒編を元に作られたアニメ作品です。テレビ等での本放送は12月に終了し、このブログでも感想記事を書きました。

「聖剣伝説 Legend of Mana - The Teardrop Crystal -」を観終わっての感想 - Ultimate Rondo

その後、公式なアナウンスとしては "新型コロナウイルスの影響を受けた最終話を、監督が本来意図していた映像へと修正" したものであるディレクターズカット版(DC版)が制作され、先日配信されました。

私は少し反応を待って観るかどうか決めようと思っていたのですが、映像面の品質向上や原作の珠魅たちのシーンの復活など多くの改善が加えられていて、本放送版に比べるとかなり好評なようです。追加制作に携わったスタッフの方々お疲れ様でした。

原作に忠実な場面の映像や演出は元々素晴らしい作品だと思っているので、その点が最終話でも強化されたことは喜ばしいです。しかしストーリーの本筋に変更はなく、セラフィナを不自然に持ち上げたことによって歪められた珠魅の物語、という私の感想は変わっていません。にも関わらずこの記事を書いている理由は、ラルクとエスカデの登場により原作の他メインシナリオ、続編の可能性が僅かにでも匂わされたからです。

この1作だけであれば過ぎたこと。しかしまたアニメ等の制作があるのであれば、こうなってほしい・これはやめてほしい、という気持ちは強くあります。改めて今思っていることと今後への期待を記そうと思います。

※本記事は聖剣伝説LoM原作のエスカデ編のネタバレを含みます。

監督の意図とは

DC版は「監督が本来意図していた映像へと修正」したものと称されています。これを信じるのであれば、

  • DC版でも維持されたストーリー改変は外部要因でなく監督の意図によるものである
  • 本放送版の制作が厳しくなった際に、DC版で追加された原作の珠魅たちのシーンよりもセラフィナのアニオリ要素のほうが優先された

ということが改めて確認されました。槍の串刺しもセラフィナの「ただいま」も監督がやりたくてやったことだし、これらは原作で主人公と珠魅たちの絆を描く「みんな…少しずつでいいから、命をくれないか…」のシーンよりも大事だったということです。

DC版を「監督が本来意図していた映像」と称するのであれば、逆に本放送版を原作に忠実に作ってDC版で好きなことをやってほしかったんですけどね。

セラフィナとシャイロの変わらない不自然さ

セラフィナの信念を示すセリフが追加されたことは良かったと思います。そして本放送版で珠魅殺しのセラフィナが被害者である珠魅たちからおこぼれ復活させてもらったことと比較して、サンドラがセラフィナのために涙を流したのであれば筋は通っているでしょう。

しかし殺そうとした相手と2人揃って他人の家に「ただいま」するのは相変わらず不自然です。もしセラフィナをシャイロと異なる正義を持つ主人公として描くならば、シャイロと最後まで対立し続け、サンドラのために泣き、サンドラの涙石によって復活し、姿を消したサンドラのもとへ帰る、その方がシャイロと(そして原作の主人公と)明確に異なる道を歩んだことが強調されるでしょう。言うなればマルチエンディングです。

アニメのセラフィナの結末は、虐殺ルートを進んでいたのに何故かトゥルーエンドに来たかのような違和感があります。「セラフィナはもう1人の主人公で、LoMの主人公はプレイヤー自身だから、こうあるべきという正解はないしどう描いても良いのだ」というセラフィナの正当化に私が納得しない最大の理由がこれです。原作と異なる展開を描く自由度は認めた上で、ただシンプルにアニメの物語が不自然で、完成度が低く、結末が強引すぎるのです。

そして2度裏切られても槍を刺されてもセラフィナを許しちゃうシャイロの盲目さを「優しい」「懐が広い」と正当化することにも納得しません。深い繋がりも信用できる根拠もないセラフィナを許すほど底抜けに優しいのであれば、サンドラに対する序盤からの強い敵意は何なのかと。珠魅を殺したことは同じ。そして手段は友人として近付きエメロードを殺害したセラフィナのほうが余程狡猾です。これでサンドラは許せない、セラフィナは信用しちゃう、無理がありませんか?

結局、「セラフィナを全肯定してハッピーエンドに参加させてあげる」という結果ありきの構成によって、ストーリーは歪み、シャイロは監督のセラフィナ擁護に利用され、展開に無理が生じている点は変わりません。独自改変を好意的に見ている方や、違和感を持ちつつも理由を持たせて納得している方の気持ちも理解できますが、私には納得できませんでした。

追記:制作スタッフコメントを受けて

制作スタッフコメント | アニメ『聖剣伝説 Legend of Mana-The Teardrop Crystal-』公式サイト

監督のコメントを引用します。

  • 今回は二人の主人公シャイロとセラフィナ。二人の性格、設定を作っていくのが私達の大きな課題でしたし、そこに注力して構成しています。
  • 言葉や行動だけでなくキャラクター達の「思い」に注目して欲しいです。

これを受けての私の感想です。

セラフィナを原作に存在しない2人目の主人公として据えるのであれば、その性格と設定を作ることは確かに大きな課題であり、まさにこの課題に向き合わなかった結果が今作だと思います。設定を盛られた完全なオリキャラが原作ストーリーを散々歪めておいて最後だけ原作の名シーンに合流する、それは2人目の主人公とは呼ばないでしょう。ストーリーの構成ではなく、やりたいシーンを論理関係を無視して並べただけです。

そして、いくら監督の頭の中でキャラクター達の「思い」があったとしても、それをアニメ中の言葉や行動として描写しなければ伝わらないでしょう。私は最終話DC版以外では無感情な裏切り殺戮者としか描かれなかったセラフィナから「思い」を感じることはできませんでした。最終話DC版では感情を吐露し、ここで初めてセラフィナの「思い」は表現されたと思いきや、「本当は嫌だった」の掌返しで結局否定されます。やりたいシーンを押し通すために都合の良いことを喋らせるのはキャラクターの「思い」ではありません。

全てが監督の頭の中で自己完結し、まさに「言葉や行動」に落とし込むことを放棄した結果が今作だと思います。監督・シリーズ構成・脚本を兼任しておきながら「言葉や行動だけでなく」と言ってしまう監督の言葉は、致命的な説明不足の言い訳あるいは自己正当化に見えます。

実際アニメを好意的に観ている人の感想には、ストーリーが破綻している箇所に対して、アニメで一切描写されていないことを「こういう心情背景や、キャラ同士の描かれていないやりとりがあったのだろう」と好意的に(半ば無理矢理に)補完しているものがありました。それをさせている時点で脚本としては失敗でしょう。

今後の展開への期待

そもそもラルクとエスカデの登場シーンは、ただの原作ファンへのサービスであるという可能性もあります。しかし公式Twitterアカウントの書き方も今後の何らかの可能性を匂わせるものであり、僅かな可能性ではあるものの無視はできません。以降の記述は、もし今後エスカデ編・ドラゴンキラー編のアニメが制作されるのであればという仮定の話です。

個人としてできることは微力ですが、原作の権利を持つスクウェア・エニックス社には、今後もしアニメ制作の機会があるのであれば

  • 今回のストーリー改変に携わった方を制作から外していただくこと
  • ストーリー等の改変に対して、厳しく監修していただくこと

をご検討ください、という意見を送りました。私が感じた今回のアニメの問題点も短く添えました。

今回のアニメで受けたダメージがまだ残っている今言うのであれば、私の期待は

原作のキャラクター・セリフ・場面をとにかく大事に、尊重して作ってください

の1点に尽きます。そして今回の設定を持ったシャイロとセラフィナではない、新しい主人公で描いて欲しいと思います。

特に不安なのがエスカデ編、これは4人の幼馴染たちのすれ違いと対立を描く物語です。幼馴染同士が殺し合う上に結末でも救われない。主人公は選択を迫られ、誰かに協力し誰かの殺害に加担することになる。宝石泥棒編よりも後味の悪い、だからこそ独特の魅力があるストーリーです。

私はエスカデ編の4人の考え方について、誰も絶対の正解ではないし誰も間違っていないと思っています(アーウィンの「行動」は世界の脅威であり咎められるべきですが)。しかし自我を抑えられない人物がストーリー改変の権限を持った場合、「主人公が誰に協力するか選ぶ」という原作ストーリーに便乗してキャラの偏重と軽視がいくらでもできてしまいます。お気に入りキャラを主人公や他のキャラに全肯定させて絶対正義にできてしまうのです。

例えば監督がダナエを溺愛している場合、主人公がダナエを全肯定し、エスカデを全否定した上で殺害するようなストーリーが作れてしまいます。流石にそんな極端なキャラ偏重はしないだろうと、今作の宝石泥棒編を観る前なら私はそう思うでしょう。今では十分やりかねないと思います。

宝石泥棒編でさえ絶対正義キャラ作成の自我を抑えられなかった人が、エスカデ編で4人全てを尊重し描き切れるでしょうか?私は無理だと思います。

原作を尊重した良い映像化になるのであれば期待したい反面、不安は非常に大きく。適切な人選と制作体制、そしてスクエニの監修に頑張ってほしいところです。

おわりに

今回の記事は以上です。DC版は一般配信されたら、珠魅たちの良いシーンなどをかいつまんで観てみようと思います。槍の串刺しとセラフィナの「ただいま」を観るのは1回だけで十分です。

「マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~」で注目したい点とリメイクの予想

2023年2月9日のNintendo Directで、アトリエシリーズ1作目「マリーのアトリエ」のリメイクが発表されました!

www.youtube.com

www.gamecity.ne.jp

最初のバージョンが発売されたのは1997年5月。リメイク版の発売が2023年の夏ということで実に26年の時を超えたリメイクとなります。

アトリエシリーズ1作目ということで、その特徴を紹介する際には特徴そのものよりも「原点」などの言葉が使われがちです。確かに最近のアトリエと比べると「マリーのアトリエ」の各種システムはシンプルですが、今振り返っても特徴的な点というのは沢山あります。

この記事では私が思う「マリーのアトリエ」の特徴を紹介し、それが今回のリメイクでどうなるのかという注目点と予想を語っていこうと思います。

ちなみに過去に移植や追加要素だけでなくシステムもリメイクされたアトリエ作品として「新・ロロナのアトリエ」があり、調合や戦闘のシステムが「メルルのアトリエPlus」をベースに大きく変更されました。そのため今回のリメイクではシステム面の大きな変更もあり得そうだ、という前提での予想です。

注意など

私がプレイしたのはPlayStationおよびゲームアーカイブスの「マリーのアトリエ Plus」です。この記事ではこれをオリジナル版と呼びます。

本記事はオリジナル版「マリーのアトリエ」のシステム、ストーリー、エンディング等のネタバレを多数含むため、オリジナル版またはリメイク版をネタバレ無しで楽しみたいという方はご注意ください。

ストーリーとゲーム進行

マリーの目的はアカデミーの卒業です。最近のアトリエではあまり採用されなくなった日数制限のあるシステムであり、5年間の中で卒業条件を満たすといわゆるノーマルエンド、さらに特定のイベントやボス撃破などの条件を満たすとエンディングが分岐します。卒業条件は「中くらいのレベルのアイテムを何か1つ調合すればOK」とかなり緩く設定されています。

最近のアトリエはメインシナリオがあってラスボスがいるという形式が多いですが、「マリーのアトリエ」にはありません。「ロロナのアトリエ」や「エスカ&ロジーのアトリエ」のような定期的な課題もないのでかなり自由です。

リメイク版でもゲーム画面に「あと4年」という表記があるので日数制限は変わらないようです。またナレーションが「仲間たちとのエピソードも追加」と言っているので何かしらのイベント追加はあります。

メインシナリオについてはこのままという可能性ももちろんありますが、

  • オリジナル版で最もメインシナリオっぽい(と思う)シアの病気イベントがより重視され、メインシナリオとして扱われる
  • 「新・ロロナのアトリエ」のように卒業後の延長モードが追加される、または「ヴィオラートのアトリエ(PSP版)」のように無限モードが追加される

などの変更があるかもしれません。個人的にはマリーの故郷であるグランビル村が登場するイベントや、ロブソン村で幼いエリーを救うイベントが追加されると嬉しいですね。

また、エンディングが強制分岐ではなく条件を満たしたものから選択可能になる等、最近のアトリエの便利な仕様も採用される可能性があります。

初見殺しと試行錯誤の楽しさ

一般に昔のゲームは今のゲームと比べて難易度が高いと言われます。「マリーのアトリエ」も、チュートリアルの少なさと様々な初見殺し要素によって序盤はつまずきがちです。

例えば酒場の依頼。最近のアトリエは優しいので序盤では序盤にクリアできる納品や討伐の依頼が並びますが、「マリーのアトリエ」はレアアイテムや敵が強い場所の採取アイテムなどが平気で並びます。依頼に失敗すると名声という値が下がりイベント進行などが遅れます。

他にも主人公マリーは戦闘では非常に弱いのでお金を払って仲間を雇う必要があり、参考書や調合機材も何から買えばいいのか分からないので、お金を浪費していると外にも行けずアイテムも作れずお金も稼げず…といった状態になります。

また特定のアイテムの採取や調合を行うと激ムズのミニゲームが発生。失敗するとアイテムは没収となり、採取や調合のし直しが必要です。

このように色々ありますが、とはいえ期限はゲーム内で5年。初見殺しに引っかかったり試行錯誤する時間も含めてかなり余裕があり、先述の通りアカデミー卒業だけなら条件は緩いのでクリアが難しいわけではありません。試行錯誤の過程も含めて楽しめる、そして2周目は経験を活かしてもっと良いエンディングに行ける、そんなゲームだと思います。

リメイク版ではオリジナル版に比べると結構易しめに調整されて、その分強いボスの追加などがあるんじゃないかなと予想しています。映像には戦闘チュートリアルのようなシーンがあるので親切度は上がっていると思います。

激ムズミニゲームはオリジナル版未プレイの皆さんにも是非体験してほしいなー…常若のリンゴとか。

調合システム

オリジナル版の調合システムは1作目だけあってシンプルで、現在の特性や品質に相当する概念がありません。

逆に最近のアトリエでは採用されることが少ない調合成功確率と調合機材のシステムがあり、アイテムごとに指定された機材を持っていない場合は調合に挑戦することはできても成功率は下がります。

調合機材というのは遠心分離器、ろ過器、天秤、ガラス器具、乳鉢。ザールブルグ錬金術士は全部釜に入れてぐるこんしていたわけではないのです…。

リメイク版の映像では調合完成のシーンが映っていますが「クラフト 作成個数3」という表示しかないので、オリジナル版と同じシンプルなシステムかなと予想します。

また、公式サイトの画像妖精さんがいますね。リメイク版でも調合や採取を手伝ったり踊ったりと活躍してくれるでしょう。

最近のアトリエの多くに用意されている複製システムはオリジナル版にはありませんが、リメイク版で追加されるかもしれません。

戦闘システム

オリジナル版は戦闘システムもシンプルで、攻撃手段は通常攻撃の「たたかう」、スキル攻撃に相当する「ひっさつ」、そしてアイテムです。

マリーは序盤はほとんど戦力になりません。通常攻撃は弱く、「ひっさつ」は強いが覚えるために特定のイベントをこなす必要があり、アイテムは複製できず調合日数がかかります。しかし「ひっさつ」を覚えてステータスを上げると無双します。

また、マリーは今で言う戦闘レベルと錬金レベルが共通です。調合や依頼成功でも経験値が入って戦闘でも強くなります。次作の「エリーのアトリエ」以降は別々のレベルになったので、これは「マリーのアトリエ」ならではのレアなシステムです。

ではリメイク版はどうかというと…今回の映像だとよく分かりません。ナレーションが「もちろんバトルも一新」と言っていますが、言及しているのがシステム面なのかビジュアル面なのかは分かりません。戦闘画面に出ている情報も少ないですしあまり複雑にはならないと思いますが、戦闘バランスは大きく調整される可能性がありますね。戦闘レベルと錬金レベルは分かれそうな気がします。

便利機能

アトリエシリーズで少しずつ追加されてきた便利機能。リメイク版の映像でもそれらを確認することができます。

イベントシーンではイベントログ、早送り、スキップなどが確認できます。イベントスキップは周回プレイでは嬉しい機能ですね。

採取地ではそもそも歩き回れるのが大きな変化ですが、フィールド回復、クイックロード、工房に戻る、スイングなどの項目が見えます。マリーでスイングできる日が来るとは…。

戦闘中は早送りと自動戦闘(たぶん)の表示が見えます。

街中ではタウンマップがあるのでファストトラベルできるのかな?オリジナル版だと街に出てそのまま帰宅すると1日経っちゃうんですが、今思うと地味にキツいのでここは変わるかもしれませんね。また街中にフィールド回復の項目があるということは、オリジナル版と同様に帰宅しても全回復しないのかも…?

音楽

オリジナル版の作曲は山西利治さんと阿知波大輔さん。街中ではほのぼのした曲やクラシック曲(バッハ)が流れますが、いざ戦闘になるとオシャレカッコいい通常戦闘曲「星風」が流れます。本当にいい曲なので是非リメイクで聴いてほしい。

今回のBGMはリメイク版とオリジナル版を選べるようです。リメイク版を誰が担当されるのかは分かりませんが、当時と比べて音源なども進化しているはずなので、原曲の良さを保ちつつさらに深みのあるサウンドを期待しています。でもオリジナル版と選択できるのであれば思い切った曲風でのリメイクもアリかなと思いますね。

地味に気になっているのがエンディング曲「始まりの丘」。オリジナル版では歌なしですが、ヴォーカルヒストリアに収録されている歌ありバージョンがあります。この"みずさわゆうき"さんバージョンが流れても激アツですし、新しい歌手さんが参加されても嬉しいですね。リメイクでは歌あり版をちょっと期待します。

ちなみに映像では「祝典行進曲」が流れていました。チョイスがシブい。

終わりに

今後情報が明らかになっていくと思いますが、マリーリメイクの驚きと感動を書き記したい!という気持ちもあって発表当日に予想記事を書いてみました。

マリーのアトリエ」は初見の人も多いと思うので、ストーリーの展開などをTwitterに大量に流すのもどうなんだと思ってブログ記事を書いたという理由もあります。あと単純に、書きたいことが多すぎました。

次の情報公開は2月20日の生放送。そして発売は夏の予定です。「ライザのアトリエ3」と合わせて楽しみですね!

「聖剣伝説 Legend of Mana - The Teardrop Crystal -」を観終わっての感想

聖剣伝説 Legend of Mana」は1999年に発売されたゲームソフトです。美しい世界、様々な種族の個性的なキャラクター、シナリオ進行とアイテム作成の自由さ、哲学的で心に残る多くのセリフ、そして素晴らしい音楽が魅力です。

その作品が、なんとこの2022年にアニメ化されました。びっくりです。

https://mana-lom-tc.com/

アニメを最終話まで観終わった今、感想として色々書きたいことがあったので記事を書きました。

記事を書くにあたって、原作のストーリーはこちらのイベント解説を参考にさせていただきました。めちゃめちゃ詳しいのでオススメです。

宝石泥棒編(聖剣伝説LOM) - アニヲタWiki(仮) - atwiki(アットウィキ)

この記事の前提とスタンス

この記事は冒頭の内容も含め私の主観的な感想であり、全ての評価は絶対的な良い・悪いではなく好き・嫌いという類のものです。

私の放送前からの期待は、原作に忠実であればあるほど良い、ただしアニメ独自要素も「こういうこともありそう」というものであれば歓迎という考えです。これは観終わった今も変わっていません。

原作は主人公にほとんどのセリフがなく「主人公=プレイヤーの分身」として進んでいきます。これはアニメ作品においては無理があるため、主人公がシャイロという1つの人格を持ち、原作に描かれていないセリフを喋ることは良いと思っています。

「主人公=プレイヤーの分身」ということは、自分のプレイ体験だけでなく、シャイロも含めて主人公の数だけ物語があるということ。アニメ作品としてだけでなく、1人のプレイヤーのゲームプレイとして追体験ができるような物語を望んでいました。

好きな点

○多くのサブキャラクターやアイテム等を魅力的に描いている

宝石泥棒編のストーリーには大量のアニメ独自の改変があります。一方でストーリーの根幹に大きく関わらないサブキャラクターやアイテム等は、非常に多くのものを原作にほぼ忠実かつ魅力的に描いてくれました。

キャラクターはバドとコロナを筆頭に、ヌヴェルやレイチェルなどのドミナ住人、フラメシュとエレ、カシンジャとヌヌザックなどなど。そしてイカレモン等のアイテムやアーティファクトの使用シーンも原作通りに描いてくれました。

良い意味で原作と印象が違ったのはドゥエルとポキール。ドゥエルは原作で戦うシーンはありませんでしたが、戦闘指南をしてくれるだけあって強いんだなと。ポキールはクールでキザなイメージでしたが、選択肢でアナグマ語を選ぶと流暢なアナグマ語を返してくれる等お茶目な点もあります。アニメではお調子者な性格が強調されていました。

○原作ゲームを設定資料で補完し、珠魅たちの過去を描いている

珠魅たちの過去は原作のゲーム内で語られる内容だけではなく、攻略本かつ設定資料集「アルティマニア」に多くのことが書かれています。ここを拾ってくれたのはとても嬉しいです。

サフォーとザル魚君の関係、エメロードの姉たちなど、序盤のイベントでは原作にない回想を補完してくれました。そして物語の核心に迫る11話では、原作にもある回想を踏襲しながらも映像と設定資料で補強してくれました。

煌めきの都市での珠魅たちの暮らしが描かれた11話は、このアニメの中でも特に好きな回です。ここは原作では、煌めきの都市を進みながら過去の珠魅たちの幻影が断片的に見える場面です。アニメではサフォーも登場し、より鮮明に煌めきの都市での出来事が描かれました。

○瑠璃やサンドラのキャラクターとしての魅力

このアニメで一番好きなキャラが瑠璃です。行動理念がはっきりしていて、真珠姫はもちろんシャイロのことも気遣うようになっていく瑠璃には好感が持てました。

敵対するサンドラ(アレクサンドル)も、行動理念がはっきりしていて好きなキャラです。蛍姫を想う気持ちと珠魅の核を奪う動機が示されただけでなく、原作で説明されなかったサンドラと宝石王の出会いも描写されたのは嬉しいですね。

○シャイロの珠魅に対する想いの強さ

シャイロはセリフや感情表現があることを加味しても、原作と比べて珠魅に対する想いが序盤から強いと感じます。

私の原作プレイ時は、ルーベンス殺害やサフォーの核が奪われた時の主人公は傍観者であり、エメロードに騎士として頼られながらも守れなかったことがきっかけで珠魅に対する想いが強くなった、という印象でした。そのためエメロードというキャラクターには特に愛着がありました。

アニメのシャイロは2話の時点で珠魅のことを知り瑠璃たちと親しくなったため、ルーベンス殺害の時点で怒りをあらわにしています。序盤でこれならエメロードの時はどうなってしまうのかと思っていたので、6話の独自展開は驚きだったと同時に嬉しかったです。

○原作になかった大人数での冒険を描いている

原作のパーティは最大でも主人公1人+NPC1人+ペットかゴーレム1体という構成で、NPCを何人も連れることはできませんでした。

その点アニメでは、非常に短い間でしたがシャイロ、セラフィナ、瑠璃、真珠姫、エメロードの5人で冒険をしている様子が描かれ非常に感動しました。これで「ティアストーン」直前まで冒険してほしかった。

好きでない点

※以降の文章中で「制作者」という言葉を使っていますが、今回のストーリー改変が誰の意向なのか、制作の内情が分からないため曖昧な表現としました。監督・シリーズ構成・脚本が全て同じ人なのでその人の可能性が高いですが、どこかの会社の偉い人の意向などの可能性もあるので。ストーリー改変に関わっていないアニメーターさんやスタッフさんを批判する意図は一切ありません。制作ありがとうございました。

×セラフィナというキャラの扱いと制作者の溺愛

ゲームの女主人公と同じ姿をしたセラフィナ。なぜ彼女を女主人公の姿で登場させてしまったのでしょうか。

セラフィナはガトでシャイロに好意的に近付き、ジオではエメロードとも交友関係を築きますが、エメロードを殺害しシャイロを複数回裏切ることになります。このアニメ独自の改変に対しては、

  • シャイロと瑠璃たちとの分断を生み、必要性のない対立を生み出している
  • 凶行に及んだセラフィナを安易に信じてしまうシャイロの、優しさというよりは馬鹿さ、無能さを演出してしまう
  • 女主人公でゲームプレイしていた人にとっては、自分の分身だった姿のキャラに対して強いヘイトが及んでしまう
  • セラフィナの状況が最終話まで全く説明されず、裏切るシーンがあまりにも無表情なため、共感もワクワク感もなく不可解さしか感じられない

と、一切のポジティブな感情を持つことができませんでした。

女主人公を協力役として出すなら何の問題もなかったと思います。また敵対役にするとしても、例えば

  • セラフィナがサンドラと同様に敵対役に徹し、シャイロが彼女を安易に信じることがない
  • またはシャイロとセラフィナに強い繋がり(幼馴染や姉弟など)があるという設定で、セラフィナを敵視できない十分な理由がある

などの展開で、シャイロとセラフィナの行動理念が明確に示され、かつ2人の関係にしっかりとしたストーリーがあればまだ納得できたのですが。主人公2人の時点で独自改変なので、2人の関係はどのようにでも設定できるはずです。

原作では宝石泥棒編だけでなく3つのメインシナリオ全てで、繋がりを持つNPC同士の戦闘(瑠璃とレディパール、エスカデとダナエ、ラルクとシエラ)があります。特にセラフィナはドラゴンキラー編のラルクのような立ち位置にしたかったのではという考察も見かけました。ですが彼らに比べてシャイロとセラフィナは関係が浅すぎます。

シャイロがあっさりとセラフィナを信じる展開、そして凶行の前後にセラフィナが苦悩するシーンを言い訳のように描くことからは、凶行に及んだセラフィナを擁護し報いを与えたくないという制作者の意思を感じます。「ひどいことしてるし理由は教えないけどセラフィナも悩んでるんだから嫌わないであげてね」と。私は制作者からそのように扱われているキャラクターを一層好きになれません。

そして悪い予感は的中し、最終話ではセラフィナが更なる凶行に及んだにもかかわらず、石化したことで本当にあっさりと許されました。原作での主人公の石化は、珠魅たちの手助けをする過程でその過酷な運命に感情移入してしまった主人公(=プレイヤー)が涙するからこそ意味があるものだと思っています。無表情で珠魅を殺害し続けた、サンドラ以外の珠魅に対する感情を全く感じられないセラフィナが、成り行きで最後だけシャイロと同等に扱われるのはあまりに都合が良すぎます。

×結果的にエメロードの殺害が軽視されてしまっている

前述した通り、原作のサンドラによるエメロードの殺害は、宝石泥棒編の中で重要なターニングポイントだと思っています。

アニメ7話のセラフィナによるエメロード殺害には、より強いショッキングさを与えようという意図があったのかもしれません。しかし「セラフィナの真意は?」「真珠姫の安否は?」と話の流れが混沌としてしまい、エメロードの殺害は逆に軽視されていると感じました。これは後のディアナ殺害も同様です。

×珠魅たちと主人公の物語が、シャイロとセラフィナの物語に歪められている

原作では「アレクサンドル」でのディアナ殺害後に、瑠璃から主人公への「アンタも考えてくれ。オレ達と関わりを断つなら、今がいい……アンタを巻き込みすぎた…」というセリフがあります。これは多くの珠魅が殺され珠魅の問題が大きくなったことを示すと同時に、「珠魅のために涙する者、全て石と化す」ため主人公の身を案じるものと解釈しています。すなわち「ティアストーン」の結末に繋がる重要なセリフです。

アニメ10話でも同様の発言がありますが、完全にセラフィナの再度の裏切りがきっかけになっています。瑠璃はセラフィナに裏切られたシャイロの気持ちも案じていますが、ディアナが殺害された場面でシャイロとセラフィナの関係への言及は本当に余計です。

原作で珠魅たちと主人公の関係を示すセリフや場面が、セラフィナの介入によってシャイロとセラフィナの関係を言及するものに歪められてしまう。これが7話のエメロード殺害、10話の瑠璃のセリフ、そして後の12話では更にあからさまに行われます。

セラフィナの不可解な行動、シャイロの安易な行動、瑠璃たちとシャイロの分断。これらはエメロード殺害以降ずっと、「ティアストーン」の結末へと向かう珠魅たちの物語に不純物として混ざり、ストーリーの焦点がぶれ続けていると感じます。

その中で救いだったのは、珠魅たちの重要な過去が語られる11話でセラフィナが登場しなかったことでしょう。

×シャイロが弱い

無敗の主人公でなくてもいいのですが、いきなりドゥ・インクに負けるのは期待外れでした。ボス戦があるはずの「ニキータ商い道中」や「小さな魔法使い」で特に苦労した描写もなかったので余計に不自然です。その後も多くの戦闘で敗北または敗北寸前まで追い詰められていました。

この点からも、シャイロの無能さが強められてしまいました。制作者の溺愛するセラフィナが戦闘能力まで高かったことと対照的です。

×真珠姫の見せ場が奪われている

瑠璃が原作以上に主人公(シャイロ)に優しくなったのは、主人公にセリフと感情が付いたことと合わせると良い改変だと思います。

一方で真珠姫は見せ場が奪われました。原作の「コスモ」で瑠璃のために闘う力を望むセリフ、「アレクサンドル」でサンドラを説得するセリフなど強い意志を示すセリフの多くがカットされ、ただの不思議ちゃんになってしまいました。安易に特徴づけし易い点だけを誇張したという印象です。

サブキャラクターであればこのレベルの改変は納得できますが、真珠姫は宝石泥棒編の最重要人物の1人で重みが全然違います。ことごとく重要なセリフをカットした制作者は、真珠姫を「ただのかわいい担当」のサブキャラクターと認識していないでしょうか。

×蛍姫の夢の中の珠魅たちの描写

10話の蛍姫の夢の中で、わざわざ原作にない「醜悪な珠魅たち」を描く必要性を全く感じませんでした。制作者は、彼らに愛着がある原作プレイヤーがこれを観てどう感じると思ったのでしょうか。キャラ崩壊させてまで描きたかったことは何でしょうか。

一応サフォーとマリーナの関係は設定資料通りではあるのですが、他の珠魅が完全なキャラ崩壊である以上、サフォーたちについても「設定資料に都合の良い材料があったから使った」感が否めません。11話の落ち着いたサフォーがアニメの中での正史であるなら尚更です。

悪夢だから辛い内容なのだというのは一理あります。しかし戦いで傷つく珠魅たちを案じていた蛍姫の悪夢としても斜め上の内容で、辛いというよりは不可解さが勝って冷めてしまいました。

シャイロの見せ場作りだとしてもずれていると思います。夢の中の見るからに異常な珠魅たちを正気に戻しても、さすが主人公!とは思えません。原作ではここで夢の中のレディパールを守るジュエルビースト戦があります。戦闘で貢献させれば良かったでしょう。

×最終話の説明不足と私物化

セラフィナの不可解な行動を全く説明しないまま最終話まで来てしまったせいで、最終話は原作「ティアストーン」の宝石王戦をばっさりカットしてもなお尺不足かつ説明不足だったと感じました。そして原作「ティアストーン」の結末こそが、珠魅たちの物語そっちのけでセラフィナとシャイロが介入しストーリーの焦点がぶれてしまった最大の被害者だと思います。

原作で主人公が涙するシーンに立ち会うのは瑠璃またはレディパールです。主人公は珠魅の過酷な運命に涙し、瑠璃またはレディパールもその主人公に心を打たれます。主人公の涙、珠魅たちの涙、そして瑠璃・真珠姫とともに主人公が家に帰るシーン、その全ては主人公と珠魅たちのこれまでの関係があったからこそ感動的なものとなるのです。

本来ここに珠魅殺しのセラフィナが混入できる理由はないはずですが、アニメは12話の主役はセラフィナだと言わんばかりの優遇ぶりです。自ら殺した珠魅たちに復活させてもらって、自分の帰るべき場所でない所に「ただいま」と言って、制作者はおかしいと思わなかったのでしょうか。原作の名シーンにセラフィナを加えてあげる、それ自体が目的になっていないでしょうか。

宝石泥棒編が元々12話分で収まりきらない物語だったという指摘もありますが、私はそうではないと思います(「マナ」までやるのであれば別ですが)。セラフィナを敵役として登場させないのであれば「ティアストーン」前後編と2話使って原作の展開を十二分に描けると思います。セラフィナが敵役だとしても、各話でしっかり説明をしておけば最終話で尺を取ることもなかったでしょう。思わせぶりなだけで何も説明していない9話のセラフィナ苦悩シーン、10話のキャラ崩壊珠魅の説得、その尺の代わりにセラフィナの行動動機をしっかり説明しておけば、こんな中途半端な最終回にはならなかったと思います。

最終話に関してはディレクターズカット版が配信されるとのことですが、作画など映像面のクオリティはともかく脚本が改善されることは私は期待できません。セリフを録り直せるのか?という問題もありますが、根本的な問題は11話以前に遡って手を加えない限り最終話まで放置したものが重すぎることです。

アニメ最終話をセラフィナの物語ではなくちゃんと珠魅の物語にするのであれば、前半でセラフィナの過去を明らかにした上で彼女を討ち、後半で原作「ティアストーン」通りの流れをやれば強引に軌道修正できるでしょう。制作者のセラフィナへの溺愛ぶりを見るに100%あり得ないと分かった上での仮定です。

全体を通しての感想

7話の途中、エメロードたちと冒険しているところまでは本当に楽しかったです。

それ以降は手放しに楽しめるものではなくなり、不満ばかり出るなら観ないほうがいいのでは?とも思いました。しかし原作も最後に珠魅たちと主人公が救われる展開であることと、感想を書き残すなら最後まで観たほうが良かろう、という気持ちもあって最後まで観ることにしました。

全体を通して、LoMの世界そのものとストーリーに絡まないキャラクターは大事に描写してくれたと感じます。原作のゲーム内だけでなく設定資料を反映させて珠魅の過去に焦点を当て、しっかり描写してくれたのも良かったです。

一方で、現在進行形で進んでいく宝石泥棒編の物語、そして女主人公の姿をしたセラフィナについては、ネガティブな方向かつ必要性のない改変が強すぎたと感じます。

原作通りでも多くの珠魅はサンドラに殺害され、最後の「ティアストーン」ではほとんどの珠魅が死に絶えて絶望を味わうことになります。エメロードも原作通りサンドラに殺されるのであればシャイロに強く惜しまれたでしょう。悲劇を描きたいのであれば原作という最良のストーリーがあったわけです。

しかしアニメではセラフィナ(そしてシャイロ)の介入によって珠魅たちの物語としての焦点がぶれ、原作の「ティアストーン」の感動すらも薄れてしまったと感じます。そして引き換えに描かれるシャイロとセラフィナの関係は非常に浅い。改変の必要性とメリットが感じられない。

この理由が単に「アニメの独自性を出したかった」「登場人物たちをギスギスさせて悲劇感を増したかった」「お気に入りのセラフィナを目立たせたかった」のであれば悲しいですし、それはゲーム原作でなくオリジナルストーリーでやれば良いと思います。原作で描かれた珠魅たちの物語を尊重して映像で彩るのではなく、制作者が押し通したいストーリーの材料として珠魅たちを使っていないでしょうか。

このストーリーを書いた制作者は余程セラフィナが好きなのでしょう。溺愛しているから、人を裏切り凶行を重ねても作中の誰にも彼女を否定させないし、原作ラストの名シーンを全部経験させてあげる。殺されたエメロードが置いてけぼりになっても、瑠璃のセリフや主人公の涙の意味が歪められてしまっても、セラフィナを目立たせるほうが大事。何をしても許されて当然だから何も説明する必要はない。私はそう受け取りました。

サンドラ側に付いた世界線の主人公がいても別に良いのです。原作ゲームの世界観と自由度の高さはその可能性を許容してくれるでしょう。しかし私はこのセラフィナというキャラをLoMの主人公だと思っていません。致命的な説明不足と無条件の肯定、原作の大切な珠魅たちのストーリーの破壊、これまでの行動を全てなかったことにしてハッピーエンドに加えさせてあげた強引で結果ありきのラスト。これはもはやファ・ディールという原作ゲームの世界に生きる主人公の1人ではなく、ストーリーに混入してしまった制作者の溺愛するオリキャラが何故か原作の女主人公の格好をしているだけであり、私には受け入れがたいです。

6話で「幸せの四つ葉」の展開が完全に変わった時にはアニメ独自ストーリーにワクワクしていましたが、こうなるのであればセラフィナもいない原作通りのストーリーのほうが良かったと、今では思います。

実際、不可解な改変がなく原作のセリフを映像と設定資料で補強した11話は、本当に素晴らしいと思ったし観ていて楽しかったです。全編この方針で作ってくれれば良かったと思わずにはいられません。

おわりに

今回の記事の内容はほぼストーリーに絞りました。ストーリー以外の点で、揚げ足取りのような「原作と比べて齟齬がある」タイプの気になる点はありますが、それは別に良いのです。再現度が高ければ高いほど嬉しいですが逆はそれほどでもありません。限られた制作リソースをそこに注いで欲しいわけでもないですし、細かい点をあげつらってストーリーの感想がぶれるような記事にもしたくないので。

繰り返しになりますが、LoMの世界とサブキャラクターの描写は本当に最高で感動しました。珠魅たちも原作通りに描いてくれた場面はとても良かったです。その姿を観られただけでも、このアニメを観た価値はあると思います。

ストーリーに関しては「共感できない二次創作」と捉えています。このアニメから産み出されてしまった各種設定の改変やセラフィナの存在が、今後のスクエニ公式のゲーム作品やメディア展開等に流入してしまわないことを願うばかりです。