Ultimate Rondo

アトリエシリーズとゲーム音楽とその他いろいろ

今だからこそ魅力を語ろう。「リディー&スールのアトリエ」感想

最近の「レスレリアーナのアトリエ」の展開を見ながら、私が求めるアトリエ作品の魅力って何なんだろうということを考えています。

「マリー」から「ライザ3」まで歴代アトリエ作品にはそれぞれの魅力があり、時代が進むにつれて進化や挑戦を続けてきました。その中でも私が求めるものがほぼ全て詰まっていて、総合的な完成度が特に高い作品だと思っているのが「リディー&スールのアトリエ」です。今作が2017年に発売されて以降、それより新しい作品もいくつか発売されましたが、今でもその気持ちは変わりません。

発売当時はアトリエ1作品ごとに感想記事を書いていなかったため、当時のプレイ感想が残っていません。アトリエシリーズがこれからどうなっていくのか予想できない今だからこそ、この作品の感想を述べ、魅力を語りたいと思います。

おことわり

  • この記事は私個人の感想や評価です。
  • 「ソフィー」「フィリス」「リディー&スール」3作のネタバレを含みます。ご注意ください。
  • DX版ではなくオリジナル版の内容に基づく、当時のプレイ体験を振り返りながらの感想です。

ストーリーとキャラクター

今作の主人公は双子の女の子、リディーとスール。2人はずっと一緒に行動しているので会話が尽きることはなく、イベントはいつも賑やかです。今作のプレイ体験全体を通した心地よさやクスッと笑うような面白さは、この主人公2人の魅力によるものが大きいと思います。

今作のストーリーをワンフレーズで述べるなら「家族愛をテーマとした王道ハートフルストーリー」でしょう。リディーとスールは3年前に亡くなった母親オネットへの想いを胸に、母親との約束を果たすために奮闘し成長していきます。そんな母親と奇跡のような再開を果たす過程で、序盤からお調子者として振る舞っていた父親ロジェの本心も明らかになっていきます。そして大切な母親を危機から救うために2人は戦い、さらに錬金術の力で母親を現実世界に蘇らせます。

トゥルーEDで故人を蘇らせてのハッピーエンドというのは流石に話が出来すぎている気もしますが、そんな指摘も野暮だと思えるくらいに家族の幸せが温かく描かれた最高の結末だったと思います。

リディーとスールは街の人々にも愛されています。ストーリー中盤で彼女たちは故郷を守るためにファルギオルを撃退し、逆にストーリー終盤のイベントでは街の人々が2人のために大事な情報の書かれた本を探してくれます。名前のあるキャラだけでなくモブの住民達が2人を助けてくれることで、故郷の温かさが見事に描かれています

主人公以外のパーティメンバーも魅力的で、特にマティアスの存在が大きいと思います。今作のパーティメンバー(DLC除く)で純粋な新キャラだと言えるのは主人公とマティアスだけです。このマティアスが最初に仲間に入って、ギャグ的な面も真面目な面も見せながら(主にイジられ役として)パーティを盛り上げていくため、私はプレイ前の印象よりも格段にマティアスのことが好きになりました。そこからフィリス・アルトと加入し、ファルギオルと対峙するピンチで満を持してソフィーが登場する流れは見事です。

「ソフィー」「フィリス」で登場した過去作キャラ達の物語も、全員ではないものの多くの伏線をキレイに回収してくれました。家族が再集結したフリッツ達、父親と再開できたコルネリア、プラフタを真に人間にするという大きな目標を叶えたソフィーとプラフタ、そしてようやく穏やかに言葉を交わすことができたプラフタとルアード。他にもカルドが属する「標の民」の話など回収してほしい設定はありましたが、十分でしょう。

絵の中で出会う人々も魅力的でした。フーコやネージュ、ざわめきの森のオバケなども可愛いのですが、その中でも私が好きなのがキャプテン・バッケンのイベントです。パーティメンバー総出でノリノリで子分になりたがるのが可愛すぎる。

メインイベントもサブイベントも、真面目なところは真面目に、ギャグはしっかりギャグにというメリハリが効いていました。基本的にはギャグの中でもキャラを大切に扱ってくれる中で、リアーネだけはかなり誇張というか暴走が激しかったような気がします。3つの贈り物イベントはとても素敵だったのでまあ良いでしょう。

ストーリー進行に関して1点ネガティブな感想を書くと、ロジェの時限イベントはメリットがない上に最悪詰むので無いほうが良かったと思います。この頃は日数制限のあるなしについてアトリエシリーズがまだ模索していた時期だったので、「フィリス」の前半と同様に部分的に入れちゃったのかなと思いますが。今のアトリエのプレイ感ややり込みの深さを考えると無いままで良いと思います。

探索と採取

今作の探索フィールドは、現実世界の街の外にある地上フィールドと、絵の中の異世界からなります。特に絵の中の世界はどれも個性豊かで、歩いている時の画面や足跡の演出も素敵です。それぞれの絵画世界に最初に訪れた時のナレーションもとても良いですね。

高低差がないので道は分かりやすく、敵避けもしやすいです。探索はけっこう快適ですが、前作「フィリス」にはあったエリア全体の地図表示やランドマークへのファストトラベルが無くなってしまったのは残念です。マップ切り替えが入る各エリアの入り口まで飛ぶ機能は欲しかったな。

見つけたい素材がエリア内のどこにあるのか分からないという問題はこの頃からあり、「ライザ3」に至るまで今もなお解消されていません。ただ今作の場合はマップ規模が小さく採取オブジェクトの種類も少ないため、だいたい少し歩くと目当ての素材を見つけられることが多いです。これ以降、マップの大規模化や採取オブジェクトの細分化がどんどん進むにつれて問題が顕在化していった印象です。

全体的に探索は可もなく不可もなくといった印象で、絵画世界の美しさとキャラ達のセリフのおかげで歩いているだけでも楽しいと思えます。

調合システム

調合システムは不思議シリーズを通して採用されているパズル調合。3作目となる今作ではこれまでの問題点も解消される一方で、システム自体がかなり複雑になりました。

「ソフィー」の時間制限と「フィリス」の熟練度、前2作で不評だったシステムを潔く廃止したのは良いと思います。調合に限らず今作には、前2作で試して不評だった要素を潔く捨てている面が多数見られ、ストレスのないプレイ体験を実現していると思います

一方で今作の調合システムは、材料の錬金成分の多様化、触媒と活性化アイテムによるバリエーション、そしてマークと色の両方を考慮しないといけないパズルの複雑さと、若干やり過ぎと思うくらい要素が多いものになっています。慣れないうちは要素の多さに面食らいますが、アイテムが集まってくると使いやすい触媒や置き方のパターンが分かってきて、この調合システムを使いこなせるようになります。

今作に限らない話ではありますが、調合によってアイテムや装備を強化できる自由度は非常に高く、品質・効果・特性などを作り込んでいくことで強敵をなぎ倒していくことができます。超威力の爆弾で吹き飛ばすのも、装備でステータスを上げてスキルで削るのも、デバフで敵の攻撃を封じ込めて有利に戦うのも、敵の攻撃を観察して属性や状態異常などの対策を取りながら攻略していくのも自由。私はここがアトリエシリーズの魅力の根幹だと思っており、今までの作品では当たり前のようにこれらの魅力を守ってきてくれたので感想記事で触れることも少なかったのですが、今となっては感謝するばかりです。

歴代のダブル主人公作品のいくつかでは、選択した主人公によって作れるアイテムや調合の選択肢に差があり、作り直すには周回しないといけないという問題がありました。今作の主人公はどちらを操作するかいつでも切り替えられる上に、どちらを選んでいても調合時の差がないためストレスフリーになっています。

調合操作の快適さという点では、

  • 並べ替えや絞り込み機能はある程度不自由しないくらいに整っている
  • 前2作では段階的に解放された成分投入時の回転が標準機能になっている
  • 成分を配置している途中でも、未投入の材料は入れ替えられる

等、便利な機能はけっこう揃っています。一方で今のアトリエ作品に慣れると、アイテム完成後じゃないと特性を選べない(作成する前に巻き戻せない)のはかなり不便です。ここは今作以降のアトリエで大きく改善された部分だと言えるでしょう。

戦闘システム

戦闘はお馴染みコストターンバトルで、最大6人で戦闘することができます。「シャリー」などでは前衛の誰に対しても後衛からアシストをすることができましたが、今作では前衛1人と後衛1人がペアを組む形式になっており、前衛の行動に反応してペアの後衛がフォロースキルを使います。いわゆる必殺技「コンビネーションアーツ」もペア単位で行うため、出したい技があれば予めペアを組んでおく必要があります。

「シャリー」などのシステムではアシストを行うと後衛キャラが交代して前に出てくるため、手数を稼ぐように戦うと前衛で戦うキャラがどんどん入れ替わります。それも6人全員で戦っている感じがしてとても魅力的でしたが、今作もまたキャラ同士の連携が感じられる良いシステムだと思います。

そして主人公たちの特権であるバトルミックス(後にDLCキャラも使えるようになりましたが…)。戦闘中に即席でアイテムを調合して使うという技です。採取素材を使うバトルミックスもありますが、真骨頂は元々持っている爆弾などをさらに強化して使えるエクストラミックスです。「メルル」のポテンシャライズや「エスカ&ロジー」のWドローに近い技で、アイテム版の必殺技と言えるでしょう。私はスキルとしての必殺技も好きですがやはりアイテムで大ダメージを出すのが好きなので、アイテムを派手に活躍させられる要素があるのは嬉しいです。

パーティキャラがマティアス以外全員錬金術士ということもあって仲間達もアイテムを使えますが、使えるカテゴリがそれぞれ違います。細かいことを言うと、リディー・フィリス・ソフィーが全カテゴリ使える万能型ならスーちゃんも同じで良かったんじゃないかと…。主人公勢のこの4人に「ゼーレキャンバス」「はじけるおくりもの」「原初/終末の種火」「一球入魂メテオボール」とそれぞれ専用攻撃アイテムが用意されているのはとても良いと思います。N/Aのほうが強いけどね!

音楽

今作は音楽も魅力的です。曲数も非常に多く、4枚組のサウンドトラックとボーカルアルバムにぎっしり収められています。

まずは通常戦闘曲について。操作キャラをリディーにしている時の「紫陽花」シリーズとスールにしている時の「向日葵」シリーズが、ストーリー進行に応じてそれぞれ3パターンあります。さらにラストダンジョンでは専用曲「Albireo」が用意されるという大盤振る舞い。ストーリーの盛り上がりとともに、リディーとスールそれぞれの成長を象徴しています。

汎用ボス曲は「Mysterious Painting」と「Gemini Wing」という対照的な2曲。特に「Mysterious Painting」は可愛さ全振りの汎用ボス曲ということで、ここまでの歴代楽曲の中ではとても珍しいです。音楽堂ではリテイクになりかけたこの曲をプロデューサーに救ってもらったというエピソードが語られています。個人的にはこの流れが後の「なんとかなるなる!」などにも繋がっていったと思っていて、アトリエサウンドの選択肢を広げてくれた曲だと思っています。見た目のゴツい敵で流れるとちょっと笑っちゃいますけどね。

現実世界のフィールド曲は阿知波さんが担当されていて、タイトルが「ふたごの小鳥、◯◯する」という形式になっています。阿知波さんはいくつかの曲でリディーとスールを双子の鳥と喩えていて、「Prism」の歌詞にも"幼い鳥が羽ばたいてゆく"というフレーズがあります。そんな2人が成長した終盤で流れる曲のタイトルが「Albireo」、はくちょう座に含まれる二連星の名前です。センスが良すぎる。

絵画世界のフィールド曲は主に矢野さんと柳川さんが担当されていて、個性豊かで幻想的な楽曲が揃っています。やはりイチオシは星彩平原の「同じ星を見上げて」、風景の美しさや感動的なイベントの数々によってとても思い出深い曲です。他には氷晶の輝窟の「蒼淵のきらめき」なども大好きです。

他にも素晴らしい曲がたくさんあって、雑誌付録のPS4テーマで「双葉」を聴いた瞬間に好きになってひたすらリピートした思い出とか、フィリスの試練で「Journey to the Beyond」を聴いて感動した思い出とか、本当に語り尽くせません。

ちなみに発売当時にボーカル曲の感想を全曲書いた記事はあります。今と文体が全然違って読み返すと恥ずかしいですね。よろしければどうぞ。

リディー&スールのアトリエ ボーカル曲感想 - Ultimate Rondo

丁寧な作り込みと遊び心

ここまでゲーム内のシステムや要素をいくつか取り上げて感想を書いてきましたが、今作の魅力はそれだけではなく、本当に丁寧で細かい作り込みとアトリエ愛に溢れる遊び心にあります。いくつかピックアップします。

図鑑、やることメモ等の作り込み

不思議シリーズの図鑑は「ソフィー」以降、アイテムやモンスター等の各ページにキャラ達の会話が載っています。ギャグだったり真剣な会話だったり色々あって読むのがとても楽しいです。

今作ではさらに、ストーリー進行において次の目標を示す「やることメモ」が、リディーとスールがお互いに書きあうような形で書かれています。これが本当に可愛い。2人のボケツッコミが見られたり、真面目な気持ちが伝わってきたり、ミレイユやフーコがいつの間にか書き込んできたり。主人公達のキャラをとても大事にしてテキストを書いてくれたんだなと思います

喧嘩イベント関連

ストーリーの中にはリディーとスールが喧嘩をして、2人が不機嫌になる期間があります。この時はストーリー内のイベントだけでなく、普段ゲーム内で流れる移動・採取・調合などの大量のセリフが不機嫌モードに変わります。

それだけでなく、多分喧嘩イベントに合わせているのかな?と思う点があって、それは図鑑です。

図鑑での会話はリディーとスールの登場頻度が圧倒的に多いのですが、喧嘩イベント中に訪れる星彩平原、そしてそのイベント進行に必要となるアイテムの会話には登場しないのです。2人が喧嘩している最中の仲間たちの会話なのかもと思いますし、プレイヤーが図鑑のこのページを初めて開く時の状況を考慮したのでしょう。これに気づいた時にはびっくりしました。

虫嫌いとオバケ嫌い

スールは虫嫌いとオバケ嫌いであり、イベントでも随所でその描写があります。ついでにオバケ嫌いはソフィーも同じなので2人揃って怖がっていました。

前述のやることメモや図鑑でのスールの書き込みにもその様子が見られますが、注目は調合中。スールを操作キャラにして虫の素材を選ぶと悲鳴を上げます。これが好きすぎて(あと身構えていないとビックリするので)今作以外でも虫の素材を選ぶたびにスーちゃんを思い出すようになってしまいました。

過去作由来のオマケ要素

今作はアトリエ20周年記念作品であり、直接ストーリーには関わらないもののお遊び要素としてアトリエ過去作の要素がいくつか組み込まれています。

まずは武器屋の店主ハゲル。パメラは「ソフィー」からずっと登場していましたが、ハゲルは久しぶりの登場となります。キャラとして登場するのはまだ分かりますが、絵画世界のあちこちにハゲル像があって調べると爆発するというのはどういう発想で産まれたんでしょう。遊び心があり過ぎます。

次にイルメリアが飼っている手乗りプニ達の名前。「ぷにまるだゆう」とか「ぷにゅににゅ」とか見たことある名前が並んでいますが、これは「トトリ」でトトリがちむたちに付けた名前が元になっています。

さらに細かいネタだとトロフィー名の1つである「合体奥義・真・滅殺秘剣神竜…」。イベント中にスールも似たような技名を叫びますが、元ネタを知らないと何だこれはという感じでしょう。「イリスのアトリエ エターナルマナ」に登場するベグルという敵キャラが、必殺技の名前が長すぎて詠唱に時間がかかる(その間に攻撃して中断させる)というネタがあり、その技名が元ネタになっています。

あとはフィリスのキャライベント中に、背景に必ずどこかに紛れ込んでいるキモカワな顔の人形。終盤のイベントだと発見難易度が高すぎてウォーリーみたいになってました。「ソフィー」でも神の落し物で降ってきたりしますが、私が知る限りの初出は「イリスのアトリエ グランファンタズム」のアイテムであるヘルドールです。フィリスとの特別な繋がりはないと思いますが、フィリスがキモカワな人形が好きという設定によって起用されたのでしょうか。

他にもタイトルコールで前2作や前世(?)の記憶から言い間違えるキャラ達がいたり、私が思い出せないだけで他にも過去作ネタは盛り込まれていたと思います。仕込まれているけどまだプレイヤーの誰にも気づかれていないネタというのもあるかもしれません。

このように、イベントシーンだけでなくゲームをプレイしている中でのあらゆる場面において、キャラクターの魅力や開発スタッフさんの作品への愛を感じることができる要素があります。歴代アトリエ作品の多くでもこういった作り込みはされていると思いますが、この「リディー&スール」はその中でも抜群だと思っています。

総括

発売から約6年経った今、「リディー&スールのアトリエ」という作品を改めて見直し、私が思う魅力について語ってきました。本当に丁寧に作られた、あらゆる面で総合的な完成度の高い作品だと思っています

遊びやすさという点で、アトリエシリーズ初めてという人には本当はこの作品を勧めたいくらいなのですが、深く楽しむには前2作からやったほうが良いというのが悩ましいところです。前2作はシステムの変更を試したり技術的な挑戦をしていて、今作と比べると少し遊びづらい点もありますが、前2作も良い作品です。

この記事を書くにあたってゲームソフトを久しぶりに起動しましたが、もう図鑑の会話や音楽堂のコメントを眺めているだけで数時間溶けます。危険です。本当に多大な労力と配慮、そして情熱が注がれた作品なのだと思うし、これを創り出してくれたことに感謝するばかりです。

今回の記事では触れませんでしたが、後に作られた「ソフィーのアトリエ2」も、今作と並ぶくらい魅力に溢れた、総合力の高い作品でした。感想記事を書いていますのでよろしければ。

「ソフィーのアトリエ2」感想とこれからのアトリエへの期待 - Ultimate Rondo

この記事では「リディー&スールのアトリエ」という素晴らしい作品を振り返りつつ、私がアトリエシリーズの魅力だと感じていること、そして新しいアトリエ作品に求めているのはこれなんだという主張をさせていただきました。これからのアトリエシリーズにおいて、今作に匹敵するような、あるいは超えてくれるような、魅力的で没頭できるプレイ体験、ゲームとしての総合的な完成度と快適さ、そして遊び心とシリーズ愛に溢れた作品に出会えることを心から願っています。