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再構成されたストーリー、こんな村が見たかった。アニメ「ライザのアトリエ」最終話まで観た感想

2023年7月から9月にかけて放送・配信されたアニメ「ライザのアトリエ」。ついに最終回を迎えました!

第1話視聴時点第4話まで視聴時点とこれまで何度か記事を書いてきましたが、改めて最終回まで観た感想記事を書きたいと思います。

※アニメで触れられなかった「ライザのアトリエ」原作でのストーリーや、「ライザ2」「ライザ3」のストーリーについての言及も含むので、ネタバレ等ご注意ください。

ストーリー

原作と同じく高橋弥七郎さんが構成されたストーリー。原作の中盤までしか進みませんでしたが、その代わりに

  • ライザ達が未熟な状態から成長する過程を描く
  • 原作より膨らませたパーティメンバー達の会話や、ライザがいない場面でのキャラ同士のやり取りを追加する
  • 原作では単なるおつかいクエストだった水没坑道の試験やガレキの除去を、上手くアニメの各話のメインエピソードに仕立てている
  • 村人達とのサブクエストをストーリーに組み込み、ライザ達の活躍を知った村人や家族が後に協力してくれるシーンを作る

等、1つ1つのエピソードがしっかり広げられていて非常に良かったです。

原作のストーリーでは、ライザ達のそれぞれの目標、ボオスとの確執と村の水源の問題、アンペル達の目的とフィルフサへの対処、島の動力安定化問題と、様々な問題が次々に顕在化し同時並行で進んでいきます。そのためゲームのイベント通りに進めると、どこで切っても未解決問題は残ってしまいます。フィルフサの問題やボオスとの確執が解決されないまま終わった点は中途半端ではありますが、原作にない形で無理矢理解決した扱いにするよりは良かったのかなと。もし2期があれば期待です。

ライザが村人達の役に立つことで錬金術に理解を示してもらい、彼らが後にライザに協力してくれる展開は、まさに私が「こういう故郷の村が見たかった」と思えるようなものでした。この点では、ライザ達が村から孤立していくような原作ストーリーよりも遥かに良かったと思います。

アニメで改変された点の多くは納得できるものでした。例えば

  • ライザの初期武器が農具に変更(原作では錬金術を知る前から錬金術士っぽい杖を持っていた)
  • クライディアの武器が「ライザ2」以降の持ち武器である弓に変更(原作ではフルートでの音波攻撃という超能力的な戦い方だった)

などはより自然な設定になりましたし、

  • 第4話でアンペルが、錬金術の強すぎる力を無責任に使うことの危険さをライザに諭すシーンを入れる(原作では中盤アンペルが仲間に加入するシーンで、アンペルの過去と錬金術に対する信念が語られ、「ライザ3」のメインストーリーにも繋がる)
  • 第4話でタオが、古代文字を読むことで仲間を救うというシーンを入れる(原作では中盤以降にタオの知識が役立ち、終盤に島の動力を安定させる場面で大活躍する)
  • 第7話以降でクラウディアが、ライザ達と冒険するために自ら弓の修業に取り組む(原作ではクラウディア自身の努力はあまり描かれず、ライザに頼り切りという面が強かった)

など、原作では中盤以降や続編で発揮されるキャラの魅力や信念を早い段階で展開に組み込んでいます。原作の終盤の展開が描かれなかった中で、これらはとても良い変更でした。

第5話のギャグっぽいアニオリ回も楽しかったです。秘密シリーズって他のアトリエ作品と比べるとイベントのギャグ要素が控えめなので、こういう話ができるのはアニオリ回ならではだと思います。

第11話で翼竜討伐というクライマックスを描き、最終話でアニオリの日常回をやって締めるという構成には少し驚きました。大団円と言うには物足りないですが、原作ストーリーの後半が問題続きだったため、アニメではあえて日常回で明るく締めたいという意志にも思えました。個人的には良い終わり方だったと思います。

キャラクターデザイン、映像、作画

アニメ公式サイト等で見られるキャラクターデザインは非常に良かったです。トリダモノさんのイラストをベースに、アニメらしくすっきりとしたデザインになりました。シーパラコラボのキービジュアルがとても好きです。

アニメ本編で特に良いと思ったのがキャラの表情です。ゲームの3Dモデルも笑顔やウインクなどは可愛いのですが、コミカルな表情パターンはありません。アニメだと場面ごとにコミカルで多様な表情を表現できるのでキャラがとても魅力的に思えました。もっとギャグっぽい表現があっても良かったくらいです。

一方で、OP/ED映像と本編のほぼ全話でライザの太ももを強調するアングルが非常に多く存在します。うんざりするほど頻繁に繰り返され、あまりにも無差別的かつ無神経に、どんなシーンにも節操なく挿入されています。第4話のアンペルがライザを諭すシーンや第11話で翼竜と対峙するシーンなど、シリアスでストーリー上非常に重要なシーンにまで侵食させてくる姿勢には呆れました。

そして調合シーンのアニメーションは、錬金術をテーマとした作品に対するものとは思えないほど、調合そのものの演出が手抜き過ぎてライザの身体ばかりを強調していました。私の感想を端的に言うと激ダサです。このアニメが錬金術や調合という行為をどういうものと解釈し、どう表現したいのか全く伝わってきません。引きの構図での作画や出来上がりシーンの手抜き加減と比べて、太ももや胸のアップは異様に描き込まれていて、何を軽視し何を偏重しているのかは明白です。以前のアニメ「エスカ&ロジー」の電子レンジのような調合シーンは「ちょっと安直だけどゲームで表現されてないから仕方ないよね」という感想でしたが、調合シーンを露骨に利用された今作のほうが遥かに印象が悪いです。

第5話の水着回(「エスカ&ロジー」であれば温泉回)のように、振り切った回でまとめてやってくれる分には良いのです。太ももが原作の話題性獲得に貢献した要素であることは事実だと思います。ニコニコ動画のコメントをセクハラで埋め尽くすような、エロとネットミームに群がる一部の視聴者層へのサービスも、少しはあってもいいでしょう。でもシリアスなシーンや調合シーンでは、もっと大事なことがあるんじゃないですか?

総じて絵コンテや映像演出を担当された人(あるいは上位の意思決定者である監督など)が、あまりにも原作に無理解だったか、安易な世間のバズりに迎合して他を軽視してしまったか、何も考えていないかのどれかだろうと思います。絵コンテ等は話数ごとに担当者が変わっていますが、全体通してこの調子なので監督またはチーム全体の意向でしょう。

せっかく原作のストーリー担当者を招いて丁寧に構成されたストーリーがあって、錬金術というアトリエシリーズ全体を象徴するテーマがあるのに、それらが軽視され映像面の安易なエロによって邪魔されたことは悲しいです。いくら原作に登場する建物や風景をたくさん描いても、原作のアイテムやモンスターをたくさん登場させても、第4話を観て以降「絵コンテや映像演出の担当者が原作をどれだけ尊重してくれているか」に対する私の信頼は一切なくなりました。

戦闘シーン

第1話でテンポが悪すぎると感じた戦闘シーンですが、やはりあれはライザ達の戦闘の不慣れさを表現する意図的なものだったのでしょう。第11話での翼竜との戦闘は、4人全員が活躍してしっかり連携する素晴らしい流れでした。

原作の戦闘では仲間の行動は非常に単調であり連携も何もないので、原作よりちゃんと連携して戦闘してる!と謎の感動を覚えるほどでした。ゲームのほうが見習って欲しい。

攻撃アイテムの映像演出は、ガレキ破壊時のフラムの火柱、翼竜戦のローゼフラム、アンペルがフィルフサに使ったプラジグなど、少し安っぽいかなという印象を受けました。しかし一方で、モンスターを殺す描写や人の怪我の描写が生々しすぎないのは個人的には助かりました(グロいものが苦手なので)。どちらも「リアルさを捨てて記号的な表現にしている」という点では同じなので、ここの良し悪しは人によるでしょう。個人的にはアイテムの演出がもっとカッコ良かったらなと思いました。

声優さんの演技

声優さんの演技は素晴らしいの一言でした。インタビューでは「ライザ3」まで演じ切ってしまったため「ライザ1」の感覚を取り戻すのに苦労したエピソードが語られていましたが、キャラと長く向き合って経験を積まれたからか、より活き活きしているように感じられました。

パーティキャラ以外ではモリッツさんの演技が好きです。

BGM

「トトリのアトリエ」以来多くのアトリエ楽曲を作られている柳川和樹さんによるBGM。私にとっては聴き馴染みがあって心地良かったです。劇伴に徹するような控えめな曲が多い一方で、少ないながらも柳川さんらしいオシャレな曲が効果的に使われていました。第5話の素材探しシーン等で流れる「お出かけ」が個人的にお気に入りです。

ゲームとアニメでBGMの使い方を比べると、ほぼ全ての時間でBGMが流れているゲームと違い、アニメだと意外とBGMのない時間が多かったです。BGMが流れ出したタイミングを過度に意識させないよう、イントロも控えめに作っているのかな?と思いました。音楽堂コメント等を読むとゲームBGMはイントロの掴みをかなり重視されていますからね。

そしてやはり注目したいのは戦闘曲。第11話の翼竜戦で流れる「古城の決戦」は、迫力がありながらもオシャレでメロディアスな、柳川さんらしい曲です。アニメ「エスカ&ロジー」でもフラメウ戦のBGM「あの春を目指して」がとても好きなんですが、けっこう近い曲調かなと思いました。

主題歌

OPテーマの「ゴールデンレイ」とEDテーマ「アロー」の曲は、BGMとは対照的に良い意味でアトリエっぽくない曲だと思います。本記事では特に「ゴールデンレイ」について語りたいと思います。

三月のパンタシア『ゴールデンレイ』 - YouTube

作詞・作曲者はるまきごはんさんのツイート

MVで描かれる2人がライザとクラウディアをモデルとしていることや、アトリエサウンドで多用される6/8拍子やアコースティックギター主体の楽器構成である点は、アトリエ作品を意識して制作されていると思います。一方で、タイトル通りの力強く進む光のように、ボーカルメロディで同じ音の繰り返しや不連続的な跳躍が多い点はアトリエサウンドとは違う特徴を感じます。アトリエの曲って、インスト曲でも歌いたくなるくらいメロディが滑らかで分かりやすい曲が多いんですよね。

MVのイチョウの葉の形で表現されている、別々の道を歩み、またどこかで出会ってという関係は、まさに「ライザ1」「ライザ2」「ライザ3」を通して描かれたライザとクラウディアの関係そのものです(レントやタオ達ともそうですが)。3作全てのエンディングで、目的を果たした後にライザは仲間たちと別れて1人になります。特に「ライザ3」のエンディング直前では、ライザとクラウディアが「時には離れて、時には一緒になって、自分の道を旅していく」と自分たちの関係を確認し合うシーンがあります。MV制作者さんが「ライザ3」までの展開も知った上で作られたのかどうかは分かりませんが、結果としては秘密シリーズ全体を通してライザが歩んだ道を象徴するものになっています。

そしてイチョウと言えば秋、夏が終わった後の季節。本当に良く出来てるなと思いました。

総じて

色々書きましたが、私はアトリエシリーズがアニメ化してくれる時点で嬉しいですし、素晴らしい点も多く、3ヶ月間楽しませていただきました。

ストーリーは本当に素晴らしかったです。アニメならではの表現や構成にアレンジされた点もありますし、原作のストーリーでもっとこうなって欲しかった、こんな村が見たかったという希望を見事に叶えてくれました。作中の時間軸は原作「ライザ」1作目ですが、3作通しての物語を既に経験したプレイヤーの感情に配慮してくれたのではないかとも思います。本当にありがとうございました。

映像面におけるエロの偏重と錬金術の軽視は最も残念だと思った点です。太ももアップ無差別入れたがりマンが原作のストーリーを尊重して重要な場面で自重する気持ちさえ持っていれば、そして錬金術と調合という行為をもっと大切に描いてくれれば、私の感想としては最高のアニメ化だったと思います。ですがそれを差し引いてもお釣りが来るくらい、本当にストーリーが魅力的でした。

今後もアニメなど、ゲーム以外の形でもアトリエシリーズが発展していくと嬉しいです。一番大事にして欲しいのはゲームですけどね(どうなることやら…)。お読みいただきありがとうございました。