Ultimate Rondo

アトリエシリーズとゲーム音楽とその他いろいろ

正統新作だと言うのなら、徹底的に。「レスレリアーナのアトリエ」感想

レスレリアーナのアトリエ、Steam版が配信されたのでプレイしました。感想を書きます。

最初に書いておきますが、ほぼネガティブな感想しかありません。普段の感想記事では避けているような皮肉や強い言葉での批判を含みます(理由)。そして長いです。ご了承の上お読みいただければと思います。

「総括」セクションに良い点・悪い点を箇条書きでまとめているので、長いなと思ったらそこまで飛ばしてください。

おことわり

今作は従来のアトリエプレイヤーだけでなく様々な人にプレイされ、話題にされています。そのため本記事のスタンスを明確にします。

  • 私はアトリエシリーズの従来ナンバリングタイトルを「マリー」から「ライザ3」までプレイ済みであり、それらと比較して今作を評価し感想を述べます(その理由は「総括」セクションをお読みください)。
  • 私は今作でも他のゲームでも「ガチャ」に課金することはありません。そのためガチャの価格や確率等に関する感想は述べません。
  • ゲームそのものの内容と、ゲーム内容に言及しているインタビュー・生放送・公式Twitter等の情報のみを扱います。ゲーム内容以外でも色々言いたいことはありますがこの記事では触れません。
  • 私はあくまで1人のアトリエファンであり、この記事の感想や主張がアトリエファン全体あるいは多数の総意というわけでは決してありません。
  • 記載内容のほとんどはSteam版配信直後である2024年1月時点でのゲーム内容に基づきますが、後のアップデートで変更された内容について部分的に追記を行うことがあります。

キャラクター

オリジナルキャラも過去作キャラも、キャラクターデザインは魅力的であり、3Dグラフィックは(キャラごとにバラつきはあるものの)概ね高品質です。この点は今作の大きな長所です。

主人公レスナを筆頭に、オリジナルキャラのデザインはアーランド・不思議シリーズのような「安心できるアトリエ」感があります。私のような従来作プレイヤーがスマホゲームに持つ抵抗をなんとか減らそうとしているのかもしれませんが、直球で典型的なアトリエらしさを目指しているように感じました。

一方でキャラクターに関する最大の問題は、最序盤から過去作キャラのゴリ押しがあまりにも目立ち、オリジナルキャラの活躍機会を奪っていることです。システムの問題点を抜きにしてこの1点だけ挙げても、「4年ぶりの新主人公」「正統新作」等よくもまあ言えたなと思います。

私はアトリエ過去作は全て好きだし、過去作キャラ達も(少なくとも味方サイドは)全員好きです。彼らに思い入れがあるのは、それぞれの原作での活躍を見ているから。だからこそ「レスレリアーナのアトリエ」という作品では、この作品のオリジナルキャラ達を優先して活躍させて欲しかった。

ゲーム開始時の主人公はレスナですが、なんと今作最初の戦闘にレスナはいません。何故か「ライザのアトリエ」の戦闘BGMを流しながらライザが戦っています。まずここで印象がめちゃくちゃ悪い。

そして過去作キャラがストーリー進行・初回ガチャ含めてぞろぞろ加入し、序盤はほとんどの場合レスナ+過去作キャラ最大4人という構成で進むことになります。しばらく進んだ後にヴァレリアが加入しますが、第一部でストーリー加入するオリジナルキャラはこれだけ。イザナやロマンは最序盤からの協力者にも関わらず、数ヶ月遅れた上に限定ガチャで実装されました。彼らよりも実装が優先された過去作キャラは30人を超えます

ストーリー中のイベントシーンではオリジナルキャラも活躍するし、イザナやロマンが戦っている描写もあるのです。しかし実際の戦闘になると彼らの姿は消え、ストーリーでは別行動中の過去作キャラや、ストーリーに一切出てこないガチャ産キャラがぞろぞろ戦いに出てきます。イベントシーン鑑賞パートとゲーム攻略パートがプレイ体験として完全に乖離していて、その繋ぎ合わせがあまりにも雑すぎます

本来最も目立たなければいけない主人公が、あくまで脇役でいてほしい過去作キャラを過剰に持ち上げるのも印象が悪いです。レスナの錬金術オタクというキャラ付け自体は良いですが、過剰な持ち上げと極端なキャラ実装状況を合わせて見ると、運営陣による過去作キャラ(=ガチャ商材)のゴリ押しを代弁・正当化しているようです。

オリジナルキャラはどうせ後から実装されるから良いだろうという話ではなく、仮にエンディングまで一気にプレイできるオフラインゲームであっても開始直後のプレイ体験がこれだと相当に悪印象です。ましてやストーリーやキャラが少しずつ追加されるオンラインゲームで、サービス開始時点でレスナだけで良いと思ったその判断を疑います。インタビューでは「今後もメインストーリー更新のタイミングで、今遊びたいなと思ってもらえるようなタイミングできっと登場するのではないかと思います」と悠長に語られていますが、イザナやロマンは最序盤でそのタイミングはとっくに過ぎているでしょう。特にイザナはシナリオの中では明らかにレスナを戦闘面でサポートする最初からの相棒として描かれており、初期パーティにいないのは本当に意味が分かりません。後からガチャに出して性能を盛っておけば良いという話ではありません。

彼らが一時的に離れるようなストーリー展開の都合とか、キャラを買うガチャゲーであるが故に途中離脱という形がとれないとか、色々と擁護気味に理由を考えたとしても、それがオリジナルキャラの実装を軽視する理由に足るものでは全くありません。というか別行動中の過去作キャラは平気で参戦し続けているので整合性なんて最初からないでしょう。結局「30人を超える過去作キャラよりもオリジナルキャラを後回しにして、今もし続けている」という事実は覆りません。

調合・戦闘シーンなどで過去作キャラ達が協力する映像(特に原作で関わりのなかった組み合わせ)は、映像だけ見れば私にとって感慨深いものです。しかし今作に過去作キャラを出す必然性がなくガチャ商材のゴリ押しにしか思えないこと、そして何よりオリジナルキャラの活躍機会を完全に食ってしまっていることによって、ポジティブな気持ちで見ることはできません。まるで卒業したOBが出しゃばってくる高校の部活のようです。

例外として過去作に焦点を当てた本編外のイベントならば、過去作キャラのほうが目立つことへの違和感はありません。ザールブルグやリディー&スールのイベントシナリオは良いものだったと聞いています。以前の記事にも書いた通り、過去作キャラの出番はこれだけで必要十分だったと思います。

従来作でも続投キャラがパーティ加入する作品は多々ありますが、例えば「メルルのアトリエ」のケイナとライアスのように、最初の仲間は主人公の幼馴染などの新キャラである場合がほとんどです(例外は主人公ごと続投の秘密シリーズ)。また「ソフィーのアトリエ2」ではインタビューで「見知ったキャラクターばかりで、スピンオフのように見えるのは避けたかったんです。今回は、きちんとした新しい物語を、シリーズ最新作として描くということがコンセプトとしてありましたので。」と語られ、続投キャラの人数を絞っています。これまでのアトリエが新しい物語を描くために気遣い続けてきたことを、今作は一発で台無しにしたのです。

過去作キャラを出すなとは言っていないし、ガチャ商材をプッシュすること自体は否定しません。その前にまずは今作のオリジナルキャラを大事にして、序盤から仲間ポジションにいるキャラはちゃんと攻略上でも早期実装して、それから他をやるべきでしょうと、ただそれだけのことです。それができない、最初からやろうという意志すら無い作品に正統新作を名乗る資格はありません。

ここまで述べてきたことがキャラクターに関する最大の問題だと思っていますが、それ以外の点で完成度が高いわけでもなく、

  • 初回ガチャの時点でストーリーに登場していないヴァレリアが唐突に出てきてレスナとイチャつき出す
  • アイテム調合時に名前すら紹介されてない過去キャラ達がゾロゾロ出てくる(全員知ってるキャラなのに「お前ら誰だよ」と言いたくなる)
  • 編成に加えたキャラが何故か見送りしてくる
  • ガッツポーズ、あざといポーズ、虫採取などの共通モーションで一部の過去作キャラがキャラ崩壊している(虫採取のみ、総ツッコミを受け後のアップデートでモーション変更)
  • 少なくない人数のキャラが原作のスキルや攻撃方法に合わない属性を割り当てられている(多少の変動は仕方ないが、特に物理か魔法かが変わると違和感が激しい)

など、ゲーム内でのキャラクターの扱いが雑だと思う点は本当に多数あります。グラフィックやモーションの表面的な格好良さ・可愛さ・色気などを偏重する一方で、「このキャラクターがこの場面でこうすることは自然だろうか?」という観点での配慮は相当に欠けています。

従来作では、「リディー&スールのアトリエ」で喧嘩イベント中に細かいセリフの変化や図鑑での配慮があったり、「ソフィーのアトリエ2」でレベルやレシピ習得の設定に前作由来の工夫が組み込まれていたり等、キャラクターの状態や背景をイベントの会話だけでなくゲーム内の細かいところまで丁寧に反映させてくれた例があります。今作はそういう深い作り込みが足りないというレベルではなく、普通にプレイしているだけで違和感だらけ。雲泥の差です。

ストーリー

ストーリーは社外のプロの方(タカヒロ氏)に依頼している部分であり、世界観やキャラクターの設定は魅力的に作られています。「錬金術を軸とした主人公と仲間たちの奮闘劇」というアトリエシリーズ伝統の要素と、「敵対する組織の謎めいた活動」という最近のアトリエシリーズでは珍しいダークな要素が両立しているのは良い点です。敵側のキャラも魅力的にデザインされています。

一方でキャラの扱いや設定の説明が雑だと思う点はストーリー中にも多々あります。例えばシャリステラは「ランターナのマナ枯渇が故郷の水涸れを解決するヒントになるかも」と言ってレスナに同行しますが、世界が違うし現象も違うので全く繋がりません。インタビューで「「レスレリに出てくる1人の登場人物である」という見せ方をしたかった」などと言っていますが、これだけ大量に出しておいてわざとらしい昔話も頻繁に挟んでくる時点でその言い分は無理があるでしょう。過去作キャラが登場する必然性と合理性はストーリーの観点でも皆無で、結局運営都合で過去キャラを絡ませたいから理由をこじ付けているように見えます。外伝お祭りゲームならその程度の理由で良いと思うのですが、今作はそうではないはずです。

設定の説明についても、過去キャラが大量に出てくる理由・瞬間移動する飴・調合スタミナが時間回復するアトリエなど、ガチャゲーの都合で追加された設定の話題になった途端に説明が雑になり、ザスキア師匠に「よく分からない」を連発させる始末です。世界観やストーリーに合わない運営都合の設定が無理やりねじ込まれ、それが異物となって世界観への没入を妨げます。

そしてイベント鑑賞パートはただメッセージ送りをするだけであり、プレイヤーが操作できる戦闘は先述の通りパーティメンバーがシナリオの流れと完全に乖離しているので、仲間と一緒に敵と対峙し困難を解決しながら冒険していく、RPGの醍醐味と言える感覚は相当に薄くなっています。「RPGとしてもこだわり抜いたタイトル」などと言っていますが一切同意できません。何度でも書きますが、この序盤のシナリオ展開でイザナが戦闘に出てこないのは本当に致命的で、ゲームプレイとしっかり連動してストーリーの魅力を味わうというRPGの醍醐味を、運営の過去作キャラとガチャへの執着が完全に破壊しています

ストーリーはまだ完結していませんし、現時点で私自身がプレイしたのは2章の途中までです。ただしここで挙げた問題点は今後の展開次第で解決・挽回できる類のものではないし、これまでのプレイ体験で私が先へ進むモチベーションを失うには十分過ぎました。この先のストーリー展開や問題点もスマホ版の情報からある程度は見聞きしていますが、自分自身のプレイ体験ではないため本記事では触れないでおきます。

調合システム

アトリエシリーズの肝となる調合システム。キャラクターと材料を同等に扱って色で繋げていくというアイデア自体は面白いと思うので、コンシューマ新シリーズの調合システムに活かされると良いなと思います。もっと自由な順番でキャラと材料を組み合わせたり、触媒のような便利パーツを導入したり、縦横で二次元的に繋げてみたり、従来のコンシューマ作品レベルの完成度であれば可能性が広がります。

しかし今作の場合はガチャで集めるキャラ資産とランダム要素の引きが全てであり、中和剤のような中間材料を用いて品質や特性を継承していく仕組みがないため、従来作のようにプレイヤーが頭を使って考えられる調合ルート組み立てや工夫の余地があまりにも少なく、本当に面白みがありません。これはアイテムの作り込みではなく、くじ引きの景品を使ったくじ引きです。スカスカなシステムで簡単に最高性能のものを作らせないために結果のランダム性を入れたんじゃないかと思うレベル。ガチャゲー会社は射幸心を煽ることしかゲーム作りの引き出しがないのでしょうか。

おまけに材料集めも調合自体の回数もスタミナによる実時間制約付き。イリス~マナケミアシリーズで重要だったマナという言葉をこんなものに使いたくないのでスタミナと呼びます。スタミナが邪魔なのは確かですが、仮にスタミナが撤廃されれば調合が面白いかと言うと決してそんなことはありません。

従来作で協力調合システムがある「マナケミア」を引き合いに出すと、「マナケミア」のエーテル値操作が今作のギフトカラーと大体同じくらいの完成度で、あとは調合中間材料のレシピをごっそり削除、目押しルーレットの代わりに結果のランダム性導入、協力調合のキャラがガチャ産、スタミナによる実時間縛りと、16年前のシステムと比べても劣化要素しかありません。言うまでもなく、不思議シリーズ以降の独自性・奥深さ・自由度があってしっかり練られた調合システムとはあらゆる点で比べ物になりません。

あと、せめて調合演出はレスナが毎回メインでやってくれませんかね…?調合ですら主人公をその他大勢と同等の扱いにして、この作品はどこまでオリジナルキャラを軽視したいのでしょう?初めての戦闘はライザだけが戦っている、そして初めての調合はマリーが釜を混ぜている、これが新主人公と正統新作でやりかったことですか?

戦闘・育成システム

戦闘システムについて。全員の行動を指示できる非リアルタイムのコマンド式に戻った点と、キャラごとにロールがあって役割分担しながら戦えるという点は、秘密シリーズの戦闘よりも良いと思います。今作の新要素として敵味方の行動順と重なるようにバフ・デバフ・バーストのパネルが配置されており、行動順を調整することでパネルの効果を得たり敵に押し付けたりできます。多くの従来作品で重要だった行動順調整がさらなる意味を持ち、アイデアとしては面白いと思います。

パネルの影響は過剰なほど大きく、行動順に干渉できないと敵のバーストで即壊滅するため、理想的な戦闘運びに貢献できないキャラや編成はかなり使いづらくなります。しかしこれも、

  • ストーリーで早期に加入するオリジナルキャラ達が標準的な編成であり、そのパーティでストーリークリアまで無理なく進められる
  • 元のロールや属性を度外視して推しキャラだけで組んでも、アイテムや装備でキャラの役割を拡張して標準的な編成と同等に戦える

といった配慮があれば解決し、攻略と育成の楽しさを感じられる戦闘システムとなったでしょう。

残念ながら実際はそうではなく、次に挙げる多数の問題があります。

  • オリジナルキャラがまともに加入せず、確定加入のシャリステラとロロナを考慮しても序盤はガチャ産キャラが最低でも2人混ざるので、リセマラが強く推奨されているほど
  • キャラの得意属性はほとんどのキャラにとって「その属性のスキルしか使えない」ことを意味し、スキルの数も少なく防御等の基本的な行動もないため、行動を工夫することで敵や状況に対応する戦略性が著しく低い
  • 調合がスカスカであり、ガチャ資産と運で強力な装備を作っても属性やロールを細かく指定してくる効果が多いため、キャラの役割を拡張する自由度が低い
  • 戦闘中のアイテムの使い勝手があまりにも悪く、アトリエシリーズの魅力であるアイテムを主軸とした戦い方ができない
  • これらの理由で味方側の育成や行動の自由度が著しく低い上に、敵側は極端な属性耐性・状態異常・庇う+カウンター等のギミック・異常な連続行動など戦略的な対処が必要な能力を多彩に持ち、推しを育成しようなどとキャラ愛に訴える売り方をしておきながらキャラの活躍の可能性を潰してくる嫌がらせのようなゲームデザインである

従来作品の多くでは調合の自由度の高さが戦闘面での攻略の多様さにも直結しており、強敵に阻まれることは調合を楽しむチャンスになります。超火力の爆弾で吹き飛ばすのか、装備の品質や特性でステータスを上げてスキルで戦うのか、敵の弱点を突く爆弾や敵が使う状態異常に耐性を持つアクセサリーを作るなど個別対策を練るのか等、調合を軸とした様々な攻略の楽しさがありました。「全てを作り込めばヌルゲー」というゲームデザインになりがちですが、それは様々なアプローチで十分に戦力を上げられることの裏返しでもあります。

対して今作は、まずアイテムの使い勝手が絶望的に悪く、

  • ゲージ制であり溜まるのが遅いので使用可能頻度があまりにも低い
  • 行動順をずらせる貴重な手段だが強制的にずれてしまうので、回復したいだけなのに敵のバーストを無駄に誘発する可能性もある
  • 複数回分のゲージをストックできないので、敵バースト回避のために温存すると他の用途に使いづらい
  • アイテムの対象を選べないため、敵の頭数減らしやブレイクによる危険行動回避など目的に応じて戦略的にアイテムを活用することができない。味方への回復アイテムも回復無効のキャラに使ってしまう等が頻発する
  • そもそも威力がキャラのスキルと比べて絶望的に低い

とあまりにも冷遇されています。従来作でもアイテムの使い勝手や有用性は作品によって様々ではありますが、ここまでアイテムが全方位において冷遇されたナンバリング作品は他にありません。アトリエシリーズらしさのカケラもない。

アイテムの使いづらさに加えてスキルの数も少なく、防御等の基本行動もなく、ほとんどのターンで選べる行動は2通りだけ。敵のバーストを回避できずに壊滅していく様子を眺め、カウンターされると分かっていて攻撃を突っ込む、本当に嫌がらせのような戦闘システムです。

このようにプレイヤーの戦略性を狭めれば狭めるほど価値を増すのが、ゲージ消費無く無尽蔵に使えるキャラスキルです。従来作ではアイテムや装備にも持たせられた役割が、ことごとくキャラスキル(=ガチャ商材)に詰め込まれています。自由な攻略や抜け道をひたすら潰して回ることで、「運営が売りたいキャラをガチャで引き、ステージごとのギミックや優遇属性の想定解でクリアしなさい」という攻略手段の押しつけ、開発者のエゴを強く感じます。これは従来のアトリエ作品の真逆です。敵側のやっていることだけを比べて従来作品も変わらないと主張する擁護意見もありますが、プレイヤー側の自由度が雲泥の差であるため質が全く異なります。

多様な攻略手段を潰すほどガチャ資産の価値は上がるでしょうし、ガチャゲーとしてそのようなゲーム性自体を否定するつもりはありません。しかしアイテムを作り込めば無限の攻略可能性が生まれるようなゲームシリーズの正統新作を名乗っておいて、その魅力を潰すゲーム性をわざわざ採用する道理はないし、キャラ性能ゲーでガチャ売りしたいならアトリエ以外のところで勝手にやってくださいという話です。

育成システムについて。典型的な課金ゲーらしく単調な周回で集める育成リソースを膨大に要求してきますが、成長リセットやレベル下限の底上げなどのシステムが後付けで導入されサービス開始時と比べると緩和されています。その一方で、同一人物であっても衣装違いであれば一切の成長状況が共有されない点や、一度成長させたキャラをリセットして成長アイテムを吐き出させるシステムは、キャラをゲームの中で生きる登場人物ではなく単なるゲームユニットとして扱い大事にしていない印象を強く受けます。

他のいくつかのゲームのように、キャラをカード等で召喚して戦う設定であったり、ゲームの世界観としてキャラがヒューマノイドやロボットである場合はそれでも良いと思いますが、今作のキャラ達はそうではないはずです。育成緩和のテコ入れが必要だったという事情は理解できますが、もし運営陣がキャラに愛着を持っているならこんな扱いをせずに、必要リソースの緩和や獲得量の上昇を十分に行うことで対応するはずでしょう。

そして単なるゲームユニットとしての扱いが極まったのが、2024年3月に仕様変更された衣装違いの同一人物の同時編成です。確かに衣装違いを連発して稼ぐガチャゲーとなった以上、同時編成不可のデメリットが大きいことは理解できます。一方でこの仕様は、キャラ達がランターナという世界で確かに生きている存在であるということを完全に否定しました。改めて問いましょう、なぜ運営都合で作品の世界観を破壊することにこれほど躊躇がないのに、正統新作を名乗れると思ってしまったのでしょうか。外伝ガチャゲーを名乗るのであれば好きにすればいいと思います。

その他いろいろ

ここまで述べてきたことに比べれば些細な問題ですが、図鑑は歴代ワーストの手抜きです。これまでのアトリエは細かいところも大事にしてくれていたんですけどね。システムの根本がこのレベルなら細部は期待するだけ無駄でしょう。

キャラデザイン・音楽など社外のプロの方に依頼している部分は、今作のゲームとしての出来とは関係なく高品質だと思います。くじ引きにお金を払う気はさらさらないが、サントラは買わせて欲しい。

胸揺れ・飴舐め・カメラアングル等のエロ媚びは目に付きますが、露骨さで言えば秘密シリーズも同レベルだと思います。ただ今作の場合はゲームとしての著しい完成度の低さ故に余計ネガティブに評価してしまいます。システムは雑で手抜きだらけの癖にこんな所だけ異常に凝りやがって、という気持ちです。ライザアニメの調合シーンが、エロ媚びだけ異様に描き込まれててそれ以外が手抜きだったのと同じ感想です。

ガチャや調合のくじ引きで、結果が出る前の演出に変化を入れることで良い結果を匂わせ射幸心を煽る機能(パチスロにそういう文化があるらしい)も、異様に細かく作り込まれているようです。他の部分のゲーム完成度が高ければ勝手にやってくれて良いんですけど、他が壊滅的だと「そこ本当に力を入れるべき箇所だったんですか?」と問いたくなります。もっと作り込むべき箇所は山ほどあるでしょう。

総括

総括として、本作の良いと思った点を挙げます。

  • 世界観・イベントストーリー(吉池さん担当分)・キャラデザイン・音楽など、社外のプロの方に依頼している要素の品質の高さ
  • 3Dグラフィックの品質の高さ
  • 調合と戦闘システムの、アイデアやコンセプトだけを見た場合の面白さと将来性

そして悪いと思った点を挙げます。

  • オリジナルキャラの軽視と過去作キャラのゴリ押しが、実装優先度・イベント演出・調合演出などゲーム全般に見られること
  • そもそも今作に過去作キャラを登場させる(運営都合以外の)必然性が全く見い出せないこと
  • 調合のスカスカさと、それをランダム要素で更に改悪していること
  • キャラ愛に訴える売り方とキャラ格差の激しさの矛盾
  • アイテムの使いづらさ、行動の選択肢の少なさ、キャラを潰す極端な属性耐性・状態異常・ギミックなど戦闘攻略の自由度があらゆる点で狭められ、開発者のエゴとガチャキャラの押し売りを強く感じること
  • 調合と戦闘デザインの問題によって、戦闘からアトリエらしさが完全に失われていること
  • その他、ゲーム全体を通してキャラの扱いの丁寧さや細部の作り込みが従来作に比べあらゆる点で大幅に劣っていること
  • ここまで挙げてきた理由によって、イベントシーン鑑賞パートとゲーム攻略パートがプレイ体験として完全に乖離し、RPGとしての魅力が失われていること
  • これらの問題を放置しておきながら異常な執着を見せるエロ媚びと射幸心煽り演出

スタミナやガチャなどのテンプレ集金要素は今作の問題のごく一部に過ぎません。第1回生放送の時点ではメニュー画面を見て「ゲームシステムには期待していない」と言いつつ、スマホゲームで稼ぐなら仕方ないとある程度は同情的な書き方をしていましたが、リリースされたものは当時の低い期待すらも遥かに大きく下回ります。

「アトリエオンライン」を槍玉に挙げて失敗だ何だと言う人々もいますが、オリジナルキャラを初期パーティに据え、スタミナを採用せず、マルチプレイによってオンラインでしかできない魅力を出そうとする姿勢があったという点では前作のほうが遥かにマシです。

今作のインタビューや生放送で語られる開発サイドからの自信満々の言葉には、ことごとく中身が伴っていません。最初から「今作はここを捨てて、ここに力を入れました」と言ってくれるならまだ良いのです。過去作キャラを大量投入してグラフィックだけ凝りまくった外伝ガチャゲーですと。もしそうであればこの記事で批判してきた多くの点はそういうものだと納得できたでしょう。キャラゲーとしては高品質のグラフィックと演出、ガチャゲーのおまけにしては整っている戦闘と調合、これで稼げるなら良いんじゃないですか、A25のコンシューマ新作開発よろしくね、そう評価していました。

そうではなく今作を「プロジェクトA25」「シリーズの正統新作」「RPGとしてもこだわり抜いたタイトル」「プレイ感は大きくは変わらない」とプロデューサーが豪語しているからこそ、そう言うのなら従来作と徹底的に比較しましょうと私はブログ記事を書いています。従来作とは似ても似つかないものを軽々しく正統新作と呼んだことが、これまでの作品達が守ってきた魅力・新しい挑戦・地道な改善の積み重ねを踏みにじる、どれほど愚かな行為であるかを主張するために。これまでの作品が好きだからこそ、それらに敬意を払って価値を守るために、そしてこのような愚行を今作限りで断ち切ってもらうために、今作には強い言葉を使わざるを得ません。

私もアトリエシリーズには稼いで欲しいと思っています。ビジネス戦略上アトリエシリーズとして新規プレイヤーのエロ釣りとガチャ集金がどうしても必要であり、従来作ファンにも売るためにナンバリングの箔付けと過去キャラ大量投入がどうしても必要だったのであれば、この判断にも同情の余地はあります。それでも堂々と正統新作を名乗る以上は、少しでも従来作と同等のプレイ感を維持するために、

  • 調合において中和剤などの中間材料を用いた特性継承や合成があり、ランダムの引きに頼らなくてもプレイヤー自身が考えて調合品を良くしていける自由度がある
  • オリジナルキャラがストーリー進行中に早期加入し、性能控えめでも育成は楽なように優遇されていて、メインストーリーはオリジナルキャラだけで十分攻略可能である

くらいの最低限の配慮はあるだろうという希望を持っていました。本当に残念なことにそのような配慮は何一つとして感じられず、サービス開始後もひたすら過去作キャラのイベントと限定ガチャを乱発し、ガチャ商材をゴリ押し続けています。足りないのではなくゼロ。これでは全く同情の余地はありません。歴代最悪のアトリエナンバリング作品とはっきり言い切ります。

サービス開始から2ヶ月ほど経って世間の評価を一通り受けた後のインタビューでも、運営面や宣伝面での反省はありつつも「「アトリエ」シリーズとして「絶対に外してはいけない」という部分のイメージは早めに掴めていた」と語っており、大きな感覚のズレを感じます。採取→調合→戦闘というサイクルを形だけなぞることが「絶対に外してはいけない」という部分なのだとしたらあまりにも浅はかであり、各要素の奥深さ・快適さ・完成度こそを大切にして欲しかった。アトリエ要素はこんなもんでいいだろう、という妥協と軽視が今作のシステム面のあらゆる部分から伝わってきます。

社外のプロの方々が担当された部分を筆頭に、部分的には良い素材が集まっているのです。しかしゲーム全体の完成度から目を背け、ストーリーは良いから、グラフィックは良いから、推しキャラが3Dで出てるからと割り切って今作を擁護することは私にはできません。正統新作と位置付けられた以上、私が求めるのは総合点の高さです。

Steam版を待っている間にスマートフォン版の動向を見てすっかり冷めてしまったということもあり、私は既に今作の根本的な改善を諦め、次のコンシューマ作品に関心が向いています。「この惨状は開発体制が違うから起こっただけであり、ガチャゲー会社とアトリエの縁が切れてコンシューマに戻れば大丈夫だろう」と、今作のサービス開始前は楽観的に考えていました。しかし今作がスマホゲーム特有の事情を抜きにしても多くの問題点を抱えていること、そしてその要因の1つがガスト側のプロデューサーの発言によるものであることから、今後の作品にも大きな不安が残ります。

もし今作と同じような価値判断でコンシューマの「正統新作」が作られた場合、たとえ買い切りのゲームであっても、システム面での完成度を軽視して調合や戦闘の作り込みが浅くなったり、これまで以上に安直に過去の人気キャラを投入してオリジナルキャラの活躍機会を奪ったり、「ライザ2」のようなイベントの雰囲気やゲームの快適性を破壊するエロ媚びが更にエスカレートすることは十分に考えられてしまいます。そうなって欲しくないと強く思うから、私はここまで正統新作という発言にこだわって批判するし、直接公式にも意見を送り続けています。これは今作だけの問題ではないのです。

ずっと好きだったシリーズがどうしてこんなことになってしまったのかと、ただただ悲しく思いますが、大事なのはこれからの作品がどうなるかです。今作の経験と反応を顧みて、考え方を変えるのか、人を変えるのか、あるいは何も変わらないのか、それは今後の作品を見ていけば分かるでしょう。コンシューマ作品のシステムを作り続けてきた開発チームのことは強く信頼しています。これまで続いてきたアトリエシリーズの面白さや魅力はこんな薄っぺらいものではありません。システムの奥深さと快適性の両立、没頭してアイテムを作り込んでいく中毒性、自由な攻略によって強敵をなぎ倒していく楽しさ、魅力的なオリジナルキャラ達の活躍、思わず笑ったり感動するような細部の作り込みと遊び心、その他沢山の魅力が詰まった総合点の高い「アトリエ正統新作」を、私は待ち続けます。

で、どうするの

ここまで散々書いておいて、プレイを続けるのかという話。この世界観がコンシューマ新作にも引き継がれる可能性があるならストーリーは追っかけようと思っていましたが、実際に自分でストーリーを追ってみるとオリジナルキャラ(特にイザナ)が戦闘に参加しないことの異常さが想像以上で、もういいかなって…自分の中で唯一価値が残っているのが過去作設定準拠の(お遊戯会じゃない方の)イベントシナリオなので、それを読むためにアカウントは残しておきます。あくまで私個人の願望ですが、なるべく早いストーリー完結とサービス終了、そしてコンシューマ作品への集中を強く望みます。

このブログでは過去記事で「コンシューマ版アトリエとして正統進化したシステムでのオフライン版リメイク」を希望していて、もしそれが叶うならガチャゲー版はやらなくて良いんですけど、実際どれほど期待できるでしょうね。エロ釣りと過去キャラ乱発で短期的には売上を稼いだようですし、開発サイドがA25をただの箔付けとしてしか認識していないのであれば儲からないコンシューマ版をわざわざ作るメリットはないでしょう。しかし軽率にA25の冠を使ったことを愚行だと認め、今からでもナンバリングタイトルとして大事にしていくという姿勢を見せるのであれば、システム完成度が高くずっと遊び続けられるコンシューマ版アトリエとしてリメイクして欲しいと思います。その方が、今作に携わった声優・イラストレーター・作曲家などの方々の良い仕事も報われるのではないでしょうか。

オリジナルキャラ達は本当に魅力的なので、リメイク版のストーリーをオリジナルキャラ達だけで再構成するか、続編がコンシューマ作品になって彼女たちの成長した姿を見られたらいいなあ。過去作キャラは自分たちの世界にお帰りください。

こうなってたらよかったのに

最後に今作に対する私の改善案というか、「こうなってたらよかったのに」という点を箇条書きで書き出します。ストーリーの序盤やゲームシステムの根幹に関わる内容が多く、これらの点に対する運営の関心も相当に薄そうなので、今から改善されることは期待していません(逆に言えばリリース後の小手先の修正でどうにもならない致命的な問題が多すぎるということです)。ただ今後の作品で今作の問題点を持ち込むことがないように、そして従来の魅力を取り戻してくれるようにという気持ちも込めて、未来のために書き記しておきます。

  • オリジナルキャラ主体でストーリーを追う無課金勢と、好きな過去作キャラを集めたり高難度に挑む課金勢、両方の遊び方ができるようにする。具体的には次のような工夫の導入。
    • イザナ・ロマン等のオリジナルキャラがストーリーでの同行時点で早期パーティ加入する(無料、あるいは従来作のDLCキャラ程度の金額で確定入手)
    • オリジナルキャラの編成が良いバランスとなるようロールを割り振り、ストーリー攻略可能な程度の戦力を持たせる
    • オリジナルキャラの育成に必要なアイテムを少なくすることで、彼らを主体に攻略を進めるのであればスタミナ等のテンプレ集金要素がもたらすストレスが軽減されるようにする
  • ストーリー進行におけるシナリオと戦闘の整合性を取る。オリジナルキャラでも過去作キャラでも、シナリオで離脱しているキャラはその間のストーリー戦闘で使えないようにする(これによって後に離脱する予定のキャラでも早期加入できる)。戦闘が破綻しないようストーリー展開も考慮し、その間の敵の強さも調整する。普通のRPGは普通にやっていること。
  • 運に頼らなくてもプレイヤー自身が考えて調合品を良くしていける仕組み。例えば次のような要素の導入。
    • 中和剤等の中間素材を用いた品質向上と特性引き継ぎ
    • 付与する特性を自分で選べるようにする
    • 同じ特性を複数使うことによるレベルアップや合成が可能で、運ではなく調合ルートの組み立てで確実に最高レベルを作る方法がある
    • その他、触媒・活性化アイテム・アイテムリビルドなど従来作からの調合システム導入や、キャラ覚醒時に高レベル特性付与確率を大幅に上げる等の工夫で、ゲームを進めるにつれて運頼みから理詰めの調合へと移行していけるゲームデザイン
  • 誰が推しキャラであっても幅広く活躍させられる、育成と戦力強化のカスタマイズ性。例えば次のような要素の導入。
    • スキルツリーのような仕組みで、キャラ性能をどのロールに寄せて育成するか選択可能にする
    • キャラ人気に関わらず全員に2つ以上のロールが実装され、推しキャラや推しの組み合わせで編成したい時にも柔軟性を持たせる
    • 装備品等で誰でも使用できるコモンスキルがあり、元のロールの特徴以外のスキルも使えるようになる
    • 装備品の効果にキャラの属性やロールを指定しないものを増やす
  • アイテムが活躍し、アイテムで強敵を攻略できるアトリエらしい戦闘。例えば次のような要素の導入。
    • 戦闘中のアイテムの使用可能頻度を上げ、ゲージ制だとしても複数回分ストックできるようにして使い勝手を上げる。使用対象も選べるようにする
    • 攻撃アイテムの威力を上げ、敵の属性耐性も爆弾の使い分けで対応できるようにする
    • 状態異常の治療アイテムや耐性装備、極端な属性耐性を低減できるデバフアイテム、蘇生効果を持つ回復アイテムなどを充実させ、敵の特徴や戦況に調合で対応できる自由度を持たせる
  • 調合や採取のモーションはレスナメインでやる。雑な共通モーションだらけで解釈違いを連発するくらいなら他キャラを使えるようにする必要はない
  • 図鑑説明文の充実。レスナ口調でのアイテム解説など
  • 揺れもの設定をオフにできる選択肢
  • こういった工夫によって少しでも従来作と同等のプレイ感を維持しようとする配慮ができない、あるいは元々する気がないのであれば、最初からA25やアトリエ正統新作を名乗らない