Ultimate Rondo

アトリエシリーズとゲーム音楽とその他いろいろ

「ライザのアトリエ2」感想とこれからのアトリエへの期待

先日、ライザのアトリエ2をクリアしました。

発売から1年以上経っていますがじっくり進めていたわけではなく、発売された日に最初の遺跡クリアまで進めてやらなくなってしまい、1年後に再開して3日ほどでクリアしたという感じです。

来月には「ソフィーのアトリエ2」が発売されます。秘密シリーズも恐らく続編が出るでしょう。そしていつかは分かりませんが、秘密シリーズの後のアトリエ作品もきっと開発されるでしょう。これまでアトリエ作品をそれなりにやってきた身として、今後のアトリエには大きな期待と大きな不安がある、というのが正直なところです。

そこで私個人の感想として、「ライザ2」をプレイしてどう感じたか、そしてこれからのアトリエに何を期待するかを書いていこうと思います。今は廃止されてしまったガストソーシャルの長大なWebアンケートに答えるつもりで網羅的に書いていきます。

以降、作品名を指す時は「ライザ」「ライザ2」のように鉤括弧付きの略称で書くこととします。またネタバレには配慮しないのでご注意ください。

ストーリー・シナリオ

フィーを巡るメインシナリオは変に奇をてらうことなく、順当に進みあっさり終わる展開だと思いました。不思議シリーズのストーリーが強すぎるので比較すると物足りないかもしれませんが、アトリエはこのくらいシンプルでも良いと思います。前作「ライザ」のギスギス感が好きではなかったので、今作のほうが好みです。

サブイベントと仲間キャラのイベントは、タオ+パティの話とクリフォードの話が好きです。盗賊団の話も割と好き。良い意味でいつものアトリエらしかったと思います。

サブイベントの展開で唯一気になったのはレントです。発売前の情報で影のある印象を持たせていましたが、暗い→昔のレントに戻って仲間になる→キャライベントで何故かまた暗い、という展開はかなり不自然に感じました。それなら仲間に入るのはもっと後のほうが良かったのでは。レントが持っていた葛藤自体には共感できるのですが、仲間加入時に「全部吹っ切れたぜ!」感を出していたため、以降のメインイベントとキャライベントで二重人格みたいになってしまう不整合がとても気になりました。

そしてプレイ時間中にイベントが占める時間が非常に長い。イベントテキストはメイン・サブともに、もっともっとスリム化できると感じました。イベント回数やイベント1回のセリフが多い割に、同じ話や同じ展開を繰り返したり、プレイヤーがすぐ察するレベルのことをライザ達がイベント何回分も悩んでいたりして、かなり飛ばし気味で読んでしまいました。

調合

これは秘密シリーズ2作を通した感想ですが、この調合システムは非常に遊びやすいと思います!革新的で見た目も特徴的だった不思議シリーズのパズル調合からぐっとシンプルになり、特に「ライザ2」では

  • 投入回数以内であればどこにでも材料を追加できて、入れれば入れるだけ効果が良くなる
  • 品質も入れれば入れるだけよくなる。従来のように品質の低い材料が足を引っ張ることはない

という分かりやすいシステムになっています。

そしてアイテムリビルドという仕組みが本当に素晴らしい。従来のシステムだと、良い材料は後で良い効果を出せるようになるまで取っておきたい、という心理がありました。しかしアイテムリビルドで後から育てるという選択肢があることで「とりあえず今の材料で最良のものを作っちゃおう」という考え方になり、ケチな思考を持たなくなりました。

かつて「エスカ&ロジー」で爆弾などのアイテムが消費制から補充制になった際に、アイテムがもったいなくて使えない問題を解決したいという岡村さんの話があったのを覚えています。それ以降のアトリエはこの考えを大事にしているのかなと。今作は複製システムも緩く、リソースとなるジェムも稼ぎやすいのでケチとは無縁の錬金術をエンジョイすることができます(万能すぎるジェムこそ賢者の石なのでは?)

従来の錬金Lvに代わるスキルツリーも良いシステムだと思います。SPを稼ぐ手段が調合以外にも複数あるのが良いですね。「トトリ」の冒険者ポイントのように、調合でも冒険でも好きなことからやっていけば自然と段階が進むシステムが好きなので、これはとても好きです。

採取・探索

まず、ゲーム開始時点でカゴ容量200は本当にありがたいです。今回は1回あたりの採取量が多いので、目当ての素材がある場所さえ分かれば爆速で集めることができます。集めやすいから気軽にジェムやショップ開発に回しやすく、好循環だと思います。

遺跡探索について。遺跡で過去にあったストーリーを解き明かしていくというのはとても好きです。「アーシャ」のチラシに似た感じ。遺跡を隅々まで回るというのも、ついでに素材探しや敵探しができるので1周であればそんなに苦ではない…と思っていました。

ただ実際のゲームプレイでは、

  • 羅針盤発見+活性度上昇をして初めて欠片が出現するので、ハマると2周歩き回ることになる
  • 地図では高低差が分からないので道が分からない
  • 道が狭く敵と何度もエンカウントする(そして倒すにしろ逃げるにしろ戦闘時間が長い)
  • 壁歩きやハイハイなどダッシュ不可のギミックでノロノロ移動を強制させられる
  • ランドマークがあるのにランドマークへのファストトラベルができない

と様々な欠点が複合してしまい、かなりストレスを感じてしまいました。地図で高低差が分かる・道が広い・ノロノロギミックを2回目から省略できる・ランドマークへのファストトラベル、等の改善があれば素晴らしいプレイ感になったと思います。

あと地味ですが、遺跡探索が完了した場所で地図を見ようと思うと、ライザが羅針盤を開く演出→もう必要ない欠片の地図が出る→通常地図に切り替え、の手順を踏まないといけないのもストレス。細かいところをもっと良くできると思います。

戦闘

秘密シリーズの戦闘はシリーズ初のリアルタイム制を導入し、非常に挑戦的だと思います。私は従来のコストターンバトルが大好きなので複雑な気持ちですが、新しい試みとしてとても良いと思います。

システムはまだまだ未熟で伸びしろがあります。操作キャラ以外が自動で行動するので、ある程度は行動を制御する設定が欲しいところです。例えば仲間が同じターゲットを狙っている時のボーナスがあり、必殺技を構える敵を集中攻撃してブレイクさせるという戦術があるので、それなら事前にターゲットを集中させる設定が欲しい。こういうのはテイルズオブシリーズが本当に良く出来てると思うので、コラボついでに参考にして欲しいです。

また、行動順が回ってくるまでゲージを眺めているのは暇です。特に戦闘開始時にすぐ動けないのでザコ戦が無駄に長くなりがち。バトルスピードを変更できたり、スイングを当てて戦闘に入るとライザが即行動できる仕様があったりすると快適性が格段に上がると思います。

戦闘中は操作が慌ただしいですが、一時停止して敵・味方の状態を見ることができるのは本当に良いですね。ここで落ち着いてターゲット設定や操作キャラ変更ができるとなお良かった。

是非秘密シリーズではこのリアルタイム戦闘を貫き通して、もっとシステムを洗練させて欲しいと思います。

音楽

「ライザ」「ライザ2」の音楽はとても高品質だと思います。お気に入りの曲もいくつかあり、今作では特に「渇いた巡りの地」や「石畳にはずむステップ」が好きです。

その一方で、個人的には激しい物足りなさを感じています。私の印象をストレートに書くと、この2作の曲は「その曲が流れる場面のキャラクター・敵・風景を描く」のではなく「音楽が好評であるアトリエシリーズの楽曲として高品質なものを提供する」ことを目指しているように思えてしまいます。手段と目的の逆転です。

これは私個人の感覚ですが、この2作は曲を聴いたときにそれがどこで流れたかパッと浮かばない曲が大半です。ただこれは、そもそも遺跡ばかり巡っているので風景が変わり映えしない、そもそもボスキャラの姿のレパートリーが少なくて専用曲がない、等の理由もあると思います。

私がアトリエシリーズの作曲者さんを好きな理由として、作る曲が高品質であるだけでなく、描く場面に寄り添う曲を作ることにこだわっている、という理由があります。それはインタビューや音楽堂のコメントでも感じることができて、

などのエピソードを覚えています。対して「ライザ」では、サウンドトラックのブックレットにて

  • 柳川さんは依頼時点で「民族楽器なし」という縛りがあった
  • 浅野さんはキャラBGMやフィールドBGMでも名作がたくさんあるにも関わらず、戦闘曲だけを依頼された

とそもそも依頼時点で制約があったというエピソードがあり、発注側で意図的にイメージの統一が図られているように思います。そして私自身の楽曲への印象も、この対照的なエピソードの通りになっています。

ただ、そもそも「ライザ」「ライザ2」には音楽堂コメントがなくて作曲者さんの考えが分からないので、それを知ることができればもっと楽曲を好きになれるかもしれません。大変だとは思いますが、音楽堂コメントの復活を切に望みます。

セクシャル要素

これを取り立てて挙げるのも変ですが、無視できない要素ではあるので。セクシャルという言葉は細井さんのインタビューから取っています。

このインタビューではトリダモノさんの画風を要因に挙げていますが、そもそもゲームの中に

  • 雨の中や泳ぎの後に服を透けさせる
  • 特定の箇所を通る際にハイハイ移動をさせて胸や尻にカメラを寄らせる
  • イベントで特に必要もなく女性キャラを歩かせて不自然に胸を揺らす

等の描写があるので、開発サイドのこれを強調する意図はかなり大きいと感じます。

私個人はセクシャル要素自体を特に嫌悪しているわけではなく、従来のアトリエにも温泉・水着・着替え等のイベントはありました。「ライザ」のプレイ中に大きく気になることもありませんでした。

対して「ライザ2」の場合は、

  • 屋外での通常イベントが、雨のせいで雰囲気が壊れる。服の透けだけでなく、ライザとクラウディアがベンチで話すシーンや、タオが本を広げるシーンが台無し。BGMも雨音で邪魔される
  • 遺跡探索、素材集め、サブイベント等で何度も通る道で、毎回強制的にハイハイをさせられ、走れずにノロノロ移動になる

の2点において、プレイ中に見る機会が非常に多く、ストレスを与えてまでこれを見せたいのか?という気分になりました。セクシャル要素が1イベントとして通り過ぎるか、ストレスや違和感とともに何度も見せられるかの違いだと思います。

そしてこれは、今後の作品において「セクシャル要素のために何かが犠牲になる」ことがどんどん増えていくことへの不安でもあります。話題性獲得とセールス増加に大きな影響を与えた要素であるが故に、他の要素を壊す大義名分を持ちかねない。早く素材を集めたい時に毎回待たされても「でも谷間が見えているからオッケー」となるプレイヤーがどれほどいるかは分かりませんが、少なくとも私はそうではありません。

総評とこれからへの期待

各要素を順番に見ていきました。「ライザ2」への印象をまとめると、

  • 新しいシステムへの挑戦はすごく良いことで、特に戦闘はまだまだ伸びしろあるので頑張ってほしい
  • 音楽は不思議シリーズ以前の方が明確に好みであり、作曲者さんの個性とアトリエの世界が融合して産まれる素晴らしい音楽をまた聴きたい
  • セクシャル要素が話題性獲得に貢献したこと自体は良いが、代わりに他の要素を蔑ろにされる傾向が見えつつあり大きな不安がある
  • これまでのアトリエ作品が少しずつ改善を重ね、積み上げてきた快適性を失わないで欲しい

という感じです。

少し過去の話になります。2019年は「ネルケ」「ルルア」「ライザ」が順番に発売された年でした。

  • 20周年記念作品として、歴代作品ユーザーへの素敵なファンサービスとなった「ネルケ
  • 一度完結したアーランドの世界を引き継ぎながらも新しい主人公の物語を描いた「ルルア」
  • 新シリーズの第1作目として、非連続な挑戦を行った「ライザ」

という並びが象徴的で、これまでのアトリエに区切りを付けて新しいアトリエへと転換する、そういう意図を感じてしまい寂しくなりました。セールス増加が後押しするかのように、新しいアトリエへの転換をさらに進める「ライザ2」が発売され、私は序盤でプレイを続けることができませんでした。明確に売れたからこそ、歴史は捨てられてしまうのではないか。そう思っていました。

転機は「ソフィー2」のインタビューを読んだ時でした。このインタビューを読んで、「ルルア」がアーランドの世界をしっかり引き継いだのと同様に、「ソフィー2」はきっと不思議シリーズの世界を引き継いでくれるだろうと思いました。そして「ライザ」「ライザ2」の作風も、秘密シリーズの個性だと思うと自然に受け入れられるようになりました。

アトリエは定期的に原点回帰をすることで有名です(?)。かつて「イリス」で錬金システムを大きく変え、RPGに舵を切った当時、「ヴィオラート」以前のプレイヤーがどう思ったかは私には分かりません。恐らくネガティブな意見もあっただろうと思います。しかしRPGを経験した後に原点回帰をした結果、錬金システムとストーリー性が両立した今のアトリエがあると思います。

その考えのもとで、私が今後のアトリエに期待することを述べます。

  • 「ソフィー2」は、進化したグラフィックと素敵な音楽とともに、不思議シリーズの鮮やかな世界と温かい人々を描き切ってくれると信じている
  • 秘密シリーズ続編は、リアルタイムバトルなどの挑戦的なシステムをより洗練させるとともに、快適性を取り戻して欲しい
  • さらに次のシリーズで、これまでのアトリエの経験が全て詰まった、「いいとこどり」の素晴らしいアトリエが産まれるといいなあ

ここまでお読みいただきありがとうございました。