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「マリーのアトリエ Remake」感想

マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグ錬金術士~」、ついに発売となりました!

www.gamecity.ne.jp

1997年に発売されたアトリエシリーズ第1作目のフルリメイク。私はオリジナル版を発売当時ではないですが、今から10年くらい前にプレイしました。今のアトリエに比べるとボリュームは少なくシステムはシンプルですが、当時の作品にしかない独特の魅力もあり、レトロゲームとして歴史の中に埋もれるには惜しい作品だと思っていました。そのため今回のリメイクで、私自身が懐かしんで楽しむだけでなく、今のアトリエプレイヤーの人々に魅力を知ってもらえることを嬉しく思います。

今回も感想記事を書きたいと思いますが、私が書きたいことがほぼ全部、発売前のプロデューサー・ディレクターインタビューに書いてあります。なのでよければまずこちらをお読みください。

『マリーのアトリエ』リメイク版インタビュー。楽しさの本質を現代のユーザーに伝えるため、無期限モードなどを用意。一方、25年前のボイスを使用するなど、ノスタルジーも大切に | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

全体的なリメイクの方向性

全体的なリメイクの方向性として、オリジナル版の魅力やプレイ体験を可能な限りそのまま残したいという強い意志を感じました。このブログではリメイクの初報が出た時にほぼ情報がない状態でシステム等を予想した記事を書きましたが、私の予想を遥かに超えてそのまま再現されています。

そもそもオリジナル版の「マリーのアトリエ」が面白くて遊び心に溢れる作品であり、キャラクターやストーリーだけでなく、細かい点も含めて様々なプレイ体験が印象に残っているゲームです。店に器材や参考書がずらっと並んでいて初期資金の使い道に悩むところから始まり、間に合うと思ったのにズルズル遅れていく依頼、ちょっと外に出ただけなのに無情に進む日付、すぐ踊りだす妖精さん、唐突に始まる謎のミニゲーム、システムに慣れて軌道に乗った時の万能感、そしてエリキシル剤と賢者の石に到達する終盤のクライマックス感。他にもオリジナル版のプレイヤーなら伝わる「マリーあるある」を、リメイクでもそのまま味わうことができます。

しかしこのままではやはり不便で遊びづらいので、ヘルプや画面に表示する注意書きなどをこれでもかと入れて、プレイヤーが考えて対処できるようにしています。

  • 工房に戻るときには1日経過するという注意書きが毎回出る(出るときもドアの前に立つと表示される)
  • 疲労やレベル不足などで調合に失敗しそうなときはマリーがつぶやく
  • 依頼、調合、戦闘などほぼ全ての場面で画面に表示される情報が大幅に増えている
  • 依頼を受けると常に画面に残り日数が表示される
  • 材料不足等で妖精さんが踊った時には常に画面にビックリマークが出る
  • イベントを進めるための条件や時限イベント等が厳しいので、全部のイベントの発生条件を確認できる

などなど、単に仕様を易しく緩和するのではなく、追加された情報を活用して当時の仕様を楽しみながら遊びこなしてほしいという意志が伝わります。

無期限モードという選択肢があるのも良いと思います。日数経過は最近のアトリエと比べると激しく、調合・移動・採取の全てで湯水のように日数が溶けていきます(特に調合日数はオリジナル版より増えています)。期限に追われるのが嫌だ・バッドエンドになりたくないという人や、クリア条件を満たした後も色々やり込みたいという人にとっては無期限モードはありがたいでしょう。

一方で本当にキツい点、面白さよりもストレスが勝ってしまうような点は仕様を変えて緩和されています。例えばミニゲームの難易度は全体的に落とされ、特に「常若のリンゴ」のミニゲームは連打が不要になっています。連打という要素を残す場合、仮に要求される連打スピードを下げたとしてもあまり面白くないと判断したのかもしれません。

意外な変更点としては、アカデミー卒業のために要求されるアイテムランクが4から6に上がりました。ノーマルエンドを迎えるにはこのくらいして欲しいという判断でしょうか。個人的にはどちらでも良かったと思いますが、あえて変更したのは少し意外でした。

洗練された採取と戦闘

システム面で大きく変更され、今のアトリエに近い形で洗練されたのが採取と戦闘です。

採取に関しては狙った素材を手に入れられるようになり、また戦闘もシンボルエンカウントで避けられるようになりました。その上で採取物も戦闘もランダムな従来の採取も選べるようにしているところがこだわりを感じます。

戦闘は行動順や技の威力が表示されるようになり、バランスも調整されています。地味に嬉しいのが戦闘でもらえる経験値の仕様変更です。オリジナル版では敵にとどめを刺さないと経験値が貰えないので、攻撃能力の低い仲間を育てるのが大変でした。

これら2つのシステム調整により賃金不要のマリー&シアだけでもある程度採取ができて、また依頼のバランス調整やイングリド先生の課題の追加などでお金が稼ぎやすくなったので、もしお金を使い果たしても立て直し可能です。序盤の金欠で身動きが取れなくなるのが一番キツいので、そこは重点的にケアされているように思います。

キャラクター

キャラクターは頭身低めの3Dモデルで、表情や仕草がめちゃめちゃ可愛いです。立ち絵やイベントのイラストは、オリジナル版のイラストの構図を踏襲しつつ今風に描き直されています。

ボイスはオリジナル版当時に収録されたものがそのまま使われています。音質や演技の方向性などで多少時代を感じる面はあるものの、26年前のものとは思えないほど自然に聞こえました(サウンドスタッフさんの隠れた努力があるのでしょう…)。オリジナル版プレイ済みの身としては、セリフの細かな言い方が記憶通りで懐かしさを感じます。

追加されたキャライベントも多く、仲間キャラがどんな人物なのかがより伝わりやすくなっています。

音楽

アレンジは谷岡久美さんが担当。原曲の雰囲気はそのままで音源などが洗練された、正統派アレンジだと思います。とても良いです。

私の好みを言うと、原曲は電子音っぽい音源だからこその力強さがあって、戦闘曲は音源が洗練されたことで迫力が減ってしまった面もあると思います。ボス曲「帰還するもの」はもう少し圧があったほうが好きだったかな。でも今のアレンジも好きです。

これは余談ですが、「マリーのアトリエ」の楽曲はシリーズを象徴する第1作目ということで、フレーズがそれ以降のいくつかの楽曲に使われています(主に阿知波さんによって)。逆に最近の作品からプレイした人はマリーをプレイしていて「このフレーズ聴いたことあるぞ…?」と思うかもしれません。私が今思い出せるものを挙げます。

  • ユーディーのアトリエ」の工房曲「お仕事ばんがろう!」の2回目のサビの後ろに、今作の工房曲「只今お仕事中!」のメロディが使われている。
  • メルルのアトリエ」のエスティの必殺技とどめ演出「エスティFJ:ラブリーシャドウ」のイントロに、今作の通常戦闘曲「星風」のイントロが使われている。
  • ソフィーのアトリエ」の後半の工房曲「春風のポーレチカ」の間奏に、今作の工房曲「只今お仕事中!」の間奏のメロディが使われている(作曲者さんツイート)。その後に武器屋の親父のテーマ「その耐え難き奇癖について」の間奏も入っている気がする…。
  • 「リディー&スールのアトリエ」のマティアスのテーマ「知ってるかい?」は、今作のブレドルフ王子のテーマ「知ってるよ」に曲調とタイトルを似せている(作曲者さんツイート)。
  • 「リディー&スールのアトリエ」のハゲルのテーマ「その耐え難き奇癖について for リディー&スール」は、今作の武器屋の親父のテーマの直接のアレンジ曲。
  • ネルケと伝説の錬金術士たち」のアバンタイトルテーマ「Alchemia」のコーラスに、今作のタイトル画面の曲「好きだった絵本」の冒頭のメロディが使われている(作曲者さんインタビュー)。

改善を期待したい点

今回はリメイクということで、オリジナル版由来の不便な要素は「あえて残している」と思っています。それを考慮した上で気になった点を2つ挙げたいと思います。今後もし同様のリメイクがあれば改善を期待したいです。

  • 採取地の道の狭さや障害物による視界の悪さのせいで敵避けが難しい。「ライザのアトリエ2」でも同じ課題があり、これはオリジナル版と無関係の要素なので改善して欲しいです。今作は敵に当たった時点で倒しても逃げても1日経過確定なので尚更です。
  • エンディングは「アーシャのアトリエ」以降のマルチエンディングの仕様と同じく選択式でも良かったのかなと思います。無期限モードがあるなら尚更、やり尽くしてからエンディングを見たいという人もいるかもしれません。優先度の低いエンディングが消滅していても、イベントリスト上では条件を満たしているように見えるのも罠です。元の仕様と追加要素がミスマッチしていると思います。

まとめ

ゲーム全体を通して、オリジナル版の魅力はそのままに、26年間の歴史の中で培った快適性や洗練されたシステムと融合させた、素晴らしいリメイクだと思います。オリジナル版をプレイした人は「マリーってこうだったよね」と思い出に浸れるし、未プレイの人は「初期のアトリエはこんな感じだったんだ」と歴史に思いを馳せることができます。

マリーのアトリエ」やザールブルグシリーズには、単に長く続くシリーズの第1作目であるという点だけには収まらない魅力があります。このリメイクを通じて私は「マリーのアトリエ」の魅力を再認識することができたし、今回初めて「マリーのアトリエ」に触れた方がその魅力を感じてくれたら私は嬉しいです。

オリジナル版の仕様を据え置きにして残すのは、簡単に見えて勇気の要ることだと思います。不便さを排除して経過日数などの数値を緩和すれば、当然遊びやすくなるし難易度は下がります。そうではなく便利な情報を大量に提供することでプレイヤーに対処方法を考えさせ、オリジナル版の仕様を楽しんでもらう、そのリメイク方針が私は好きです。

これだけ良いものを作ってくれると、エリー以降のリメイクも是非とも期待したくなります。インタビュー記事でも「可能性はもちろんあります」と言われているので楽しみに待ちたいと思います。エリーもオリジナル版めっちゃ面白いんですよ…。

今後のリメイクへの期待を述べたところで、今回の記事は終わろうと思います。もちろん秘密シリーズに続く新シリーズも引き続き楽しみにしています。お読みいただきありがとうございました。