Ultimate Rondo

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三者三様の魅力が彩る夢幻世界。「ソフィーのアトリエ2」のボーカル曲について語る

ソフィーのアトリエ2」には、アバンタイトルテーマ「Syndetos」、イベント挿入歌「Nemo」、エンディングテーマ「Planisphere」という3曲のボーカル曲が使用されています。

どれもとても良い曲で、「ソフィー2」の物語やアトリエシリーズの世界観にぴったりだと思います。また不思議シリーズのこれまでの曲と関連するような遊び心も色々含まれています。

しかし今作には残念ながら音楽堂の作曲者コメントがなく、サウンドトラックにも曲ごとのコメントは記載されていません。公式サイトに作曲者さんと歌手さんのコメントがありますが、発売前に公開されたので曲や歌詞の中身にはあまり触れられていません。

そのためこの記事では、1人のプレイヤー目線での感想や気付いた点などを語っていきます。ゲーム中で曲が流れる場面にも触れていくので、ネタバレにはご注意ください。(エンディングの内容にガッツリ触れます!

はてなブログはJASRAC管理楽曲の歌詞を掲載することが可能なので、説明の中で歌詞の一部を掲載させていただきます。

また3曲ともYouTubeミュージックから自動生成された動画(合法なもの)で聴くことができるので、YouTubeへのリンクも貼っておきます。

★Syndetos

Syndetos - YouTube

曲の概要

  • 作詞作曲:矢野達也さん
  • 歌:鈴湯さん

ストーリー最初のイベントで流れる楽曲。このイベントを観た後はゲーム起動時にも流れるため、実質オープニングテーマでもあります。

ゲームで流れる範囲でも2つの拍子(リズム)が使い分けられていて、穏やかな雰囲気と躍動感が表現されています。しかしフルバージョンの展開はこの比ではなく、2番では全く新しいメロディが始まり、サビの雰囲気も1番とはガラッと変わります。「Into the Journey」の壮大な展開や「クローマ」の全くメロディの違うツインボーカルを思い出すような、矢野さんの新しい挑戦を感じます。

歌詞には今作のテーマである、そして前作のテーマであるが描かれています。ソフィーとプラフタの物語を描くとともに、この歌詞は不思議シリーズそのものを描いた歌詞であると思っています。

前作テーマ「Phronesis」について

「Syndetos」を語る上で欠かせないのが、「ソフィーのアトリエ」のオープニングテーマ「Phronesis」です。「Syndetos」には「Phronesis」の歌詞とメロディが多く使われています。

  • あなたが叶えたい夢を聞きたいな
  • 私は識る
  • 私何を叶えたいの

これらは「Phronesis」にほぼ同じ歌詞が存在します。そもそも「Phronesis」の歌詞を読み返すと「ひとりで悩んでた夢の探し方」から始まり「夢を歌おう」で終わるという、全体を通して夢をテーマとしたものとなっています。これは今作への壮大な伏線というわけではなく(まさかね…)、不思議シリーズ、そしてアトリエシリーズにおいて主人公や仲間たちが夢を叶えるということが大きな共通テーマになっているからだと思います。

曲名の「Phronesis」「Syndetos」も古代ギリシア語という点で共通しています。Phronesisは実践的な知という意味で、錬金術もしくはプラフタをイメージした曲名だと思っています。対してSyndetosは、「結び付けられている」「混ぜ合わせられている」のような意味です(たぶん…)。この言葉も錬金術をイメージする言葉であり、ソフィーとプラフタの関係も表しているのではないかと思っています。

「Phronesis」の作曲は柳川さんですが、今作でもアレンジされたソフィーのテーマソング「やってみよう!」は矢野さん作曲で、この曲のメロディも「Syndetos」に含まれています。

「絵筆と希望の唄」について

もう1つ触れておきたいのが、「リディー&スールのアトリエ」のエンディングテーマである「絵筆と希望の唄」です。不思議シリーズを締め括るにふさわしい曲であり、3作品のテーマが取り入れられています。歌詞を引用します。

走らせた筆先で

奇跡を紡ぐ旅を始めよう

開かれた表紙をくぐって

夢の先の未来図を描く

という歌詞の1~3行目は絵画がモチーフとなっていますが、4行目にしっかりがあるんですよね。そしてこの「夢の先の未来図」という言葉が「Syndetos」にしっかり登場しています。これがまさかの4作目への伏線だったらびっくりです。

ちなみに「Phronesis」と「絵筆と希望の唄」にも、ほぼ共通の「ひとりで悩んでた夢の探し方 あなたは(君なら)分かるかな」というフレーズがあります。

「Syndetos」まとめ

従来作からのプレイヤーにはお馴染みの不思議シリーズの安心感と、異世界での冒険でのワクワク感を見事に表現した曲だと感じました。それだけでなく前作テーマ「Phronesis」と、これまでの不思議シリーズ全体に対するアンサーソングでもあると感じました。

今回取り上げた2つの過去楽曲の他にも、不思議シリーズには「わたしの見たい景色まで」「光ノ軌跡」「Into the Journey」など、歌詞にという言葉が複数回登場する曲がたくさんあります。不思議シリーズを通して、夢を見つける、夢を叶えるというテーマが一貫して描かれ、楽曲にもしっかり表れていること。それに気付くきっかけをくれた曲でした。振り返って過去作の曲を聴いてみるのも面白いと思います。

★Nemo

Nemo - YouTube

曲の概要

  • 作詞:青木香苗さん
  • 作曲:阿知波大輔さん
  • 歌:霜月はるかさん

プラフタの町長就任イベントで流れる楽曲。阿知波さん作曲・霜月さんボーカルの「Eternal Story」から続くお馴染みのコンビです。

私はこのコンビの、爽やかで明るい曲が大好きです。他には「Cynthia」や「もしも時を飛べたら」などなど。(「Liela Xea」みたいなのも好きですけどね)

タイトルの「Nemo」はラテン語で英語の nobody(誰でもない) に相当する単語で、「遠く瞬いてる 名前のない星を」という歌詞と関連していると思われます。

歌詞の解釈

このセクションは裏付けのない、完全に私の解釈です。この歌詞は誰の目線、あるいは誰を描いた歌詞でしょうか?

素直な解釈はソフィー視点での歌詞というものです。曲冒頭の歌詞を引用します。

小さな頃に見た

不思議なその力

瞳の奥 消えないひかり

誰にも言えなくて

上手にできなくて

だけどずっとあこがれていた

このフレーズからは、小さい頃に祖母から教わった錬金術を愛し続けるソフィーの姿が浮かびます。

一方で私は、この歌詞はソフィーだけではなく、ロイテールに来てそれぞれの夢を追い求めている、ゲームでは名前の出てこない一人ひとりを描いているようにも感じました。それは「Nemo」というタイトルの印象もありますし、ゲーム中でもモブである住人達がエルヴィーラを諭すイベント(ここ個人的にめっちゃ好き)があるように、ロイテールの名も無い人々が印象に残っているからです。そしてこの曲はロイテールの住民たちがプラフタ町長を迎え入れるイベントで流れるものです。こういう解釈もアリなんじゃないかなと。

余談ですが、青木香苗さんの歌詞は「その世界に生きる、メインキャラではない誰か」の視点なのかもと感じるものが他にもあります。個人的には「Cynthia」や「TOGGLE」はそうかなと思っています。(これらもいずれブログ記事で語りたい)

歌詞の遊び心

この「Nemo」にも、歌詞の中に過去作の楽曲にちなんだ遊び心が隠れています。3回のサビそれぞれの最後のフレーズを引用します。

  • 降りそそぐ木漏れ日の中
  • 吹き抜ける春風の中
  • やわらかな陽だまりの中

これは前作でのアトリエ(工房)内BGMである「木漏れ日のカンパネラ」「春風のポーレチカ」、そして今作の「陽だまりのピアチェーレ」という3つの曲名にちなんでいます。作曲は全て阿知波さんです。

★Planisphere

Planisphere - YouTube

曲の概要

  • 作詞作曲:柳川和樹さん
  • 歌:近藤佑香さん

エンディングのスタッフロールで流れる曲です。曲名の意味は歌詞にも出てくる星座盤です。

エンディングではありますが、アップテンポで疾走感のある曲。こういうエンディング曲は大好きで、王道バラードとはまた違った良さがあります。

歌詞の解釈

これは私が思いついたのではなくTwitterで見かけたものなのですが、ラミゼルの視点を描いたものであるという解釈が好きです。歌詞をいくつか引用します。

※(追記)「おとのはしらべ21」のコメントで柳川さんがラミゼル視点であると明言されていました。

羽ばたく君は不器用すぎて

思わず隣歩いていたんだ

新しく願う どうか幸せに

繰り返し祈る みんな幸せに

羽ばたく君は不器用なりに

少しずつ高く高く離れる

離れていてもまっすぐ進め

また会う時は星座の下で

今作のエンディングでは、ソフィー達がエルデ=ヴィーゲから元の世界に帰った後、ラミゼルだけが残ってエルヴィーラとの最後の時を過ごします。そしてラミゼルがモノローグの中でソフィー達の未来の幸せを祈り、スタッフロールが始まります。

ラミゼルはエルヴィーラに対しても、ソフィー達に対しても、仲間の中で優しく見守るように接してきました。先ほど引用した歌詞は、エルヴィーラと出会った時の気持ち、ゲームのエンディングで別れたソフィー達への気持ち、そしてゲームでは描かれなかったエルヴィーラとの別れの後の気持ちを描いているように思えます。

エルヴィーラはソフィーにもらった「夢幻のペンデュラム」によって、人々が元の世界に帰った後も夢の中に入って話すことができます。皆が夢を持ち続けていれば、それが夜空の星のような目印となってきっとまた会えるはず。別れの寂しさだけでなく未来への希望に溢れたエンディングであることが、前向きな歌詞からも疾走感のある曲調からも感じられます。

おわりに

この記事は「ソフィー2」の発売直後から1年以上、書きかけ状態のまま上手くまとまらずに放置していました。ふと気が向いたので楽曲を聴き直したりゲーム内のイベントを見直したりして記事を完成させましたが、やっぱり「ソフィー2」のストーリー、キャラクター、音楽、とても良いですね。

楽曲や歌詞の考察については、断片的ながらも今まで考えたネタがいくつかあるので、今後も記事を書いていきたいです。でも本当は自分の勝手な考察を書くよりもご本人の音楽堂コメントが読みたい…。